「雪上の赤。」天上の花 はるたろうさんの映画レビュー(感想・評価)
雪上の赤。
詩人三好達治。妻子を捨て16年4ヵ月思い続けた慶子を後妻として迎え、越前三国で隠れるように静かで質素な暮らしを始める。
日本が戦争へと突入してゆく中で自分は金の為に愛国心を詠む。詩人としての葛藤と空しさ。人としての弱さと捨てられない自尊心。やがて身も心も堕ちてゆき、慶子に暴力をふるうことで精神を保とうとするようになる。でも達治が一番憎悪を抱いていたのは他ならぬ自分自身に対してだろう。
長過ぎた16年4ヵ月。その間に愛情はただの執着に変わっていたのかもしれない。男尊女卑の思考が強く、堅物で神経質。とてもじゃないけど今まで不自由なく暮らしてきた慶子の手には負えない。
東出昌大は心を病んだ役がうまいと改めて思った。詩の朗読も心地良かった。入山法子の雰囲気も時代によく合っていたし何より美しかった。終わりがちょっとくどくどしてしまってそこが残念でしたけど、文学的で良質な1本でした。
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