連鎖のレビュー・感想・評価
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ダンサー・イン・ザ・ダーク
韓国版ダンサーインザダークと言ったら言い過ぎでしょうか?
知的障がい者のソックが徹底的に不幸になっていく姿を描いており、主人公を演じたキム・デミョン氏の演技が素晴らしく、本当に健気でかわいそうで涙が出ました。
何も救われないし、おそらく彼は犯罪も犯しておらず、最後の終わり方はおそらく入水してその人生を終えたのだと私は理解しましたので、陰鬱な結末なのだと思います。
他の方が書いているように、社会的に障がい者に対してなんの救済もないのはおかしい、という点等、都合のいい脚本ではありますが、私は嫌いではないです。
が、見る人が見たら趣味の悪い映画であることは間違いありません。
負の連鎖にモヤモヤとイライラが止まらない
韓国社会にもソーシャルワーカーがいて、いろんな福祉行政が行われていることは知っている。どの程度のレベルなのかまでは知らないが。
だから、本作で知的障害のある主人公の周りで福祉の匂いがまったくしないことに強烈な違和感があった。仕事もしているし、地域社会に馴染んでもいる。「自立」していると言ってもいいかもしれない。でも、彼の生活を支援するのが教会だけってのはちょっと非リアルに感じてしまった。
そこに事件が起こるって展開なのだが、その前後を曖昧にしてるから妙なんだよ。大体、ウンジは感電したって雰囲気を出していたけど、そこはなんの問題にもならなかったのだろうか。首を絞められていたわけでもなく、外傷もないのに意識を失っていたんだよ。さらに性虐待ってことだが、本当に性犯罪であればいわば未遂に当たるんじゃないか。
それなのに、神父の許してやってくれないか?論と、所長の犯罪だから罰を受けてもらいます!論が争うのはどうにも居心地が悪かった。真相の周りでウロウロしているのは、本当にモヤモヤして、イライラする。
大体、精米所を売ってしまって(成年後見人だとしても問題)、収入源を絶たれどうやって生活させるのか神父の支援もまったく感じられなかったのも嫌なところ。同情するなら仕事やれ。
それでいて感動の展開が待っているわけでもないし、スッキリするわけでもない。なんなら、後味の悪い終わり方をすることもなかった。観ている側が戸惑う終わり方だった。観ている側に何を感じさせたかったのか?監督に聞いてみたくなる。
盛り込み過ぎ。消化不良。
演者の演技は皆素晴らしく、引き込まれた。
また、ドローンを使った撮影も迫力があり、韓国の田舎の素晴らしい風景は、田舎者の自分に郷愁を感じさせてくれた。
しかし、である。
知的障害を持つ青年と虐待(予想だが)を受けた少女が逆境に立ち向かう社会派映画?と思いきや、後半はミステリー要素も。しかも尻切れトンボな回収で幕引き。
この尺なら、的を絞ってもう少し丁寧にまとめられなかったかなぁと。
また、シェルターの所長の思い込みだけで重大事件化は釈然としない。前半では、ソックはウンジを性的対象と見ていないのに、カメラワークがそれを想起させるようなスカートの裾、素足をズームしてたり。後半は、ソックに懇意にしてくれていた村人達の手のひら返しも、余りに不自然。1番親切だった店主が何故か冷酷にソックを突き放し、印象薄い男性が庇っていたり、そしてそこに至る心情描写も希薄。
起訴されて以降は、これでもか!というくらいソックが阻害されるが、そこまで執拗に描く必要があったのかな?と疑問。
最後の30分で、何らかの形で救いがあるかと期待したが、それもなし。司祭の強い後悔と決意もソックとウンジを会わせただけで、その先が見えず、所長もウンジの事故の傷に引っかかりを感じた様子ながら、そこからスルー。
消化不良で終わってしまった。
原題は、石ころ、というらしいが、個人的にはそのままで良かったと思う。ウンジが大切にしていた石。そこにソックの絵を描き、ソックに渡す。それをソックは逆境の中で握りしめていた。
石ころみたいに社会で扱われる弱者が、厳しい環境下でお互いを大切な存在として慈しむ。そんなメタファーだと感じた。
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