「 0.4%」牛久 taroさんの映画レビュー(感想・評価)
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日本の難民認定率である。つまり、日本は、難民条約の加入国で形式上は難民申請を受け付けているが、実際は「難民お断り」の国なのである。その結果、牛久では難民申請者を非人道的に処遇する施設が国によって運営されている。「されていた」ではなく、「されている」のである。
深刻な内容のドキュメンタリー映画を観た後は重い気持ちになることがあるが、この映画は、そうした気持ちだけでなく、無力感・脱力感をももたらす。それほど、この映画は、圧倒的に非人間的・非人道的な権力行使が、入管法に則って(難民条約には違反して)合法的手続で進められている事実を可視化し、観る者の心を打ち砕く。
おそらく、多くの人は、ウィシュマさんの事もあって、こうした事を薄々察知している。しかし、自分の国のそんな残酷な現実は見たくはないだろう。私は映画を観てしまったが、「こんなひどい政策は変えるべきだ」という怒りよりも無力感が強かった。情けない話だが、年々、この国は、もう良くはならないという絶望感が深まってる。しかし、この残酷な現実から目を逸らす事も、おそらくは精神を蝕む。無意識的に視野狭窄の状態に自分を矯正し、優れた芸術・学術ほど多量に含んでいる《不都合な真実》から目を逸らし続けなければならないから。どちらを選ぶかといえば、私は残酷な現実から目を逸らさない方を選ぶ。たとえ絶望を深める事になっても、優れた芸術・学術に接したいから。それに、絶望的な状況でも諦めずに闘い続ける収容者の人々がいる事を、この映画は教えてくれる。絶望という態度も非当事者の特権的嗜好品なのかもしれない。
先頃、岸田首相は「人道的見地」からウクライナからの難民受け入れを表明した。これを牛久に収容されている人々は、どのような思いで聞いただろうか。
《付記》パンフレットは、1000円と高めの値段ですが、日本の難民政策の問題点の解説や監督のインタビュー等、充実しています。