「極秘作戦の虚々実々を描いた一本」オペレーション・ミンスミート ナチを欺いた死体 talkieさんの映画レビュー(感想・評価)
極秘作戦の虚々実々を描いた一本
<映画のことば>
「艦長、潜水艦に180cmの魔法瓶が?」
「積めるが…乗組員たちには、何と言えばいい?」
「極秘の気象観測装置だ…とでも。」
「まるで小説ですな。」
「だが、包囲されているんだ。」
「ドイツに?」
「小説家たちに。」
実際の遺体を使って行われた作戦の名前が「ミンスミート(挽き肉)」。
なんとも生々しいネーミングですけれども。
「名は体を表す」とも言われるとおり、名が「体を表した」ネーミングではあったと思います。評論子は。
少しばかり、悍(おぞ)ましい感じがしないでもありませんけれども。
極秘の作戦であるだけに、ドイツ側にはもちろん、身内であるイギリス軍内部でも秘密厳守が徹底される。
たとえイギリス軍内部といえども、周囲は(作品の執筆ネタを絶えずかぎ回っている)小説家=スパイだらけだと思えとの含意だったとのだろうと思います。上掲の映画のことばは。
しかし、ちょっと立ち止まって考えてみると、要するに、イギリス海軍の将校に似せた適当な遺体にニセ文書を持たせて、それでドイツ軍をだまくらかそうという、児戯に類した、いわば「子ども騙し」みたいな作戦。
そんな作戦を、大の大人―しかも歴とした軍人が軍の作戦行動として、真顔で大真面目に立案するというところには、コメディ的な要素すら感じられてしまいます。
そんな作戦にまでたどり着くほど、連合軍としては戦局的に窮地に立たされ、「起死回生の一策」ということだったのでしょう。
時のチャーチル首相も大乗り気だったようで、作戦の終了を告げた(成功を祝した?)彼ののメッセージも、とてもとても秀逸なものでした。評論子には。
戦争にまつわるヒューマンドラマというよりは、奇想天外な「極秘作戦」の虚々実々を、程よい「ゆるさ」で描いた娯楽作としての色彩の方が強いかとは思いますが、それで、佳作としての評価は間違いのない一本だったと思います。
評論子は。
<映画のことば>
世界の運命は、あの死体にかかっている。