「事実は小説より奇なりとはこのこと。」オペレーション・ミンスミート ナチを欺いた死体 といぼ:レビューが長い人さんの映画レビュー(感想・評価)
事実は小説より奇なりとはこのこと。
事前知識が全くない状況で鑑賞しました。
元々本作を鑑賞する予定は無かったのですが、観たかった映画の上映まで時間に余裕があったため、ちょうど上映していた本作もついでに鑑賞。
結論ですが、観て良かった!!凄い面白かったですね。
第二次世界大戦中に実施された、奇想天外な欺瞞作戦。「こんな子供だましが成功するわけないだろ」と誰もが思うような作戦に、大の大人たちが雁首揃えて頭抱えて挑む。そして(史実だからネタバレじゃないですが)作戦は見事に成功する。ユーモアがあって痛快で面白い!!
作戦とは関係ない恋愛描写が邪魔だったところが個人的に不満でしたが、それ以外はかなりクオリティが高くて面白い映画だったと思います。
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1943年、大戦で劣勢状態にあったイギリス軍は、地理的に要所とされていたイタリアのシチリア半島への侵攻を計画していた。しかしシチリアは既にドイツ軍によって占領されており、下手に接近すれば迎撃され、多くの犠牲が出てしまうことは明白であった。そんな中、英国諜報部によって一つの作戦が提案される。それは、軍人に見せかけた死体に「イギリスはギリシャ侵攻を計画している」とする偽造文書を持たせ、その死体を海に流してドイツ軍に発見させることにより、シチリアに配備されたドイツ軍の人員をギリシャ防衛に割かせるという突飛な作戦だった。
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本作で描かれる「ミンスミート作戦」は実際に1943年にイギリス軍が実行し、大成功を収めた軍事作戦です。成功するとは思えないあまりにも荒唐無稽な作戦ではありますが、入念な準備とシミュレーションによって見事にドイツを欺き、シチリアの奪取に成功します。
この映画の上映時間のほとんどは、作戦準備の描写に割かれています。水死体に見えるような外傷のない死体を探し、死体に「ウィリアム・マーティン海軍少佐」という偽装の名前と役職を与え、彼が恋人の写真や手紙や滞在したホテルの領収書などを持たせることで、あたかもウィリアム・マーティン海軍少佐という人物が実在したかのように人物背景を練り上げていく。リアリティがあるフィクションをみんなで協力して作り上げていくその描写が非常に面白い。ここは観ていてワクワクするシーンでしたね。
そして、完璧な下準備をしていよいよ作戦決行。あれだけ綿密な作戦を立てていたものの、実際に作戦が行われると色々とトラブルが続出します。「機密文書を持った死体が中立国のスペインに漂着したら、スペインにいるドイツスパイがすぐさま死体の回収にくるだろう」と目論んで、計画通りスペインに漂着したにも関わらず、ドイツのスパイが死体を回収しに来なかったり…。
もしかしたら計画は失敗したかもしれないという雰囲気の中、スペインからイギリスに引き渡された死体の所持品から「偽装文書が開封されている」ということが判明し、シチリアへの侵攻を決行する。するとドイツ軍はイギリスの作戦通りシチリアからギリシャに兵を移動させていたため、侵攻作戦は大成功を収める。
映画には描かれていませんが、この作戦の後にイギリス軍がマジの機密文書を紛失してドイツ軍に拾われてしまったことがあるそうで、その際にドイツ軍は「これもミンスミート作戦と同じく偽装文書だ」と勘違いしてしまい、事前に相手の作戦を知っていたにも関わらず準備をせずに大きな損害を被るという事案もあったそうです。そういう史実を調べてみると、この映画は更に楽しめると思います。
ただ若干の不満点がありました。それが随所に見られたラブロマンス要素ですね。
断言しますがこの映画には恋愛要素は一ミリも要りません。ただでさえこういう頭を使う映画は複雑で難しくなりがちなのだから、余計な部分は削ぎ落して短く簡潔明瞭にしないといけないんですよ。あちこちに散りばめられた恋愛要素のせいでダラダラと長い映画になってしまっている印象で、結局上映時間は128分という2時間超えになってしまっています。恋愛要素を全部排除して110分くらいの尺にするか、上映時間は同じでいいから作戦に関する説明を追加して分かりやすくしてほしかったと思います。
多少の不満点はありましたが、面白い映画だったことは間違いありません。観ておいて損は無いと思います。オススメです!!