「中途半端になぜ恋愛を絡めたのだろう」オペレーション・ミンスミート ナチを欺いた死体 熱帯雨林さんの映画レビュー(感想・評価)
中途半端になぜ恋愛を絡めたのだろう
どの分野の映画と呼べばいいのだろうか。作戦が成功するかどうかのスリルを味わえるわけでなく、むろんサスペンスでもなし、戦いを見せる戦争映画でもない。男二人の友情を見せるものなのか。ジャンル不明のストーリーに妙におずおずとした恋愛を絡めて、また各個人の家族問題などが余計で、焦点のボケた映画になってしまったと思う。正直なところ、ジャンルなんてどうでも良いと思っているけど、何を見せたいのかわからない映画になってるのがねぇ・・。もっと作戦に集中した手に汗握るような映画にできたはずの題材だと思うけどな。ま、日本語副題で結果発表してしまってるけど。
時系列がだいぶ進んだ、成功か失敗かをジリジリしながら、祈りながら待つ場面から映画が始まるので、おお、これは成功までのギリギリの綱渡りを見せる映画かと期待。しばらく個人問題などがノロノロと続き、途中からの男女の三角関係のような展開も有って、これは作戦遂行を単に絡めただけの恋愛映画の方に進むのかと勘違いまでしたわ。その恋愛もなにか中途半端なままだし、作戦終了後も感激が伝わらないというか、良かったぁという達成感も感じられない。あんなどうでも良い恋愛の話は一切を省き、もっと作戦の遂行のみにストーリーを絞って、また相手国との駆け引きに話の中心を持っていった方が良かったと思う。どうやって溺死として押し通すかなどのサスペンス風の味付けとかでね。あの解剖の場面は、それで終わるんかい、って拍子抜けだった。あるいは、ずいぶんな年齢なのに奥手のままの二人のロマンスをメインに持ってきて恋愛映画に思い切って振ってしてしまうとかね。反対に、スペイン駐在三重スパイの武官はドアの外で盗み聞きしながら秘書とセックスもどきをしてたけど、あんな真実味のないアホみたいな場面は要らんわ。
ただ、これが実際に行われた作戦だったというのが驚き。発案したのもスゴいが、よく戦局を変える一端となった上陸作戦を成功にできたもんだと感心する。結局、収穫は第二次大戦中にこんな作戦が展開されていたのを知れたことのみ。観なくても全然惜しくない中途半端な映画だった。
ところで、こんな作戦が有ったことを知らない人が多いと思うので、成功したことを示す「ナチを欺いた死体」って過去完了形の副題をつけるのは止めてくれ。観る前から成功したことがわかってしまって、つまらん。せめて作戦が成功するかどうか分からなければ、その報告で「うわっ、どう考えても無理なこんな作戦が成功したのか」って少しは感動したかも。よけいな副題が遠因で星一つ減。日本以外では、実話ベースのスリル映画にでも分類されているのかな。