劇場公開日 2023年1月13日

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「映画が彼を離さなかった」モリコーネ 映画が恋した音楽家 asukari-yさんの映画レビュー(感想・評価)

映画が彼を離さなかった

2023年1月15日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

※ドキュメンタリー映画は娯楽・芸術だけでなく、時代・報道によって大きく左右されるという考えから、私のレビューではドキュメンタリー映画の採点はしていません。

 2020年に91歳で逝去した映画音楽の巨匠:エンニオ・モリコーネ。「荒野の用心棒(1964)」をはじめ「アンタッチャブル(1987)」や「海の上のピアニスト(1998)」など多くの映画音楽を手掛け、生涯現役であり続けたマエストロの最期の5年間に密着したドキュメンタリー映画です。
 自分にとってエンニオ・モリコーネの曲と言えば「ニューシネマ・パラダイス(1989)」。あの風景や情景に合わせた美しい音楽・・・観終わった後に作曲家の名前を調べ覚えました。それから観た映画でモリコーネの名前を見ると「やっぱすげえなぁ」と思いながらその映画音楽を聴いていました。彼の風貌や動画を見る限り自分が持つイメージは“寡黙”。だからこそ、如何にして名曲を生み出したのかに興味を持ちました。それがこの映画を観る理由です。

 そして画面に出てきて語りだすモリコーネを観て、そのイメージは覆りました。

「ごぢゃしゃべるやん、このじいちゃん」

 語り出したらキリがないのではと思うぐらいに軽快に語り続けるマエストロ。実はこちらが本当の顔だったか。しかしその軽快な語り口から出てきた思いが“純音楽と映画音楽に対する葛藤との戦い”であったことに驚きだ。彼の音楽の師が映画音楽に対して快く思っていなかったことから「師を裏切ってはいないか」という葛藤にさいなまれていたそうな。しかし彼はそれを作曲することで払拭していった。その曲は、映画の情景を見事にとらえたモノばかりであった。そしてそれを聞いた映画人たちが彼に作曲を依頼していった。その中で音楽に対する映画人の意識を変えていったことも驚きだった。またモリコーネは普通に音楽を作るだけでなく、雑音にまで音楽を求めていった。楽器以外にも音楽の要素があれば取り入れていった。どれだけ名が知れ渡ろうとも、指摘されれば自分を変える柔軟さを持ち、探求心がヘタることはなかった。それがモリコーネの曲は常に新しいんだなと思えるんだと感じ、

映画音楽の地位向上にモリコーネなしでは語れないことを感じました。

 そんな彼がオスカー1回だけとは!!名誉賞を与えたとはいえアカデミー賞はどこを見ていたのか。しかもその1回も86歳で受賞した。もっともっと受賞してておかしくないのに。これは率直な意見です。それだけモリコーネは偉大な作曲家であることを、この映画では語っていました。少なくてもモリコーネに触れることができるこの映画は素晴らしいドキュメンタリーです。

 それゆえに、率直な意見をもう一つ・・・

 91歳での死は、映画界にとって早すぎた。

 映画の序盤でも観られるのだが、モリコーネは常に体を作っていた。タクトを振るために、作曲するために。この度は転倒による大腿骨骨折で手術をした後に病院で亡くなっている。新型コロナの影響で体を鍛える機会が少なくなり筋力が落ちてしまったのか。もし転倒しなければ、もし新型コロナがなければ彼はこの先も名曲を生み出していたのかもしれないと思うと、彼の死は早すぎたと思うのです。

asukari-y
LaLaさんのコメント
2023年5月7日

asukari-yさん
初めまして、
クリスタルに共感を
ありがとうございました。

マエストロ、モリコーネ氏の映画音楽が
大好きなのでこちらへ・・
昨年は、息子さんの来日公演にも
行けたので感激でした。
映画公開を楽しみにしていましたが
コロナに感染してしまい諦めました。
素晴らしいレビューをお届けくださり
ありがとうございました。

LaLa
asukari-yさんのコメント
2023年3月6日

talismanさん、コメントありがとうございます。

わかっていただけて助かります🙇‍♂️

asukari-y
talismanさんのコメント
2023年3月6日

ドキュメンタリーは採点しない、なんだかとってもわかります!

talisman