劇場公開日 2022年9月9日

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「恋の障害役はトンネルさん」夏へのトンネル、さよならの出口 つとみさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0恋の障害役はトンネルさん

2025年4月5日
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鑑賞方法:VOD

あらすじを読むと、ウラシマトンネルというギミックを中心としたミステリーか、少なくともサスペンス的な要素がありそうに思えた。
しかし蓋を開けてみれば驚くほどシンプルなラブロマンス作品だった。
ウラシマトンネルのギミックは少々複雑で物語を前へ進めるために絶妙に機能しているけれど、仮にそれが分からないとしても問題ないところはいい。

塔野カオルと花城あんずが主人公である。この二人以外ほとんど誰も出てこないと言っていいほどに二人のことだけが描かれる。
二人はそれぞれ、得たいものをウラシマトンネルに求めるわけだが、本当の本当に必要だったものはトンネルの中ではなく互いに与え合えた。

恋愛映画を観る上で一番ひっかかるのは、なぜこの人を選んだのかというところだ。恋に理由などないだろうから、実際に求めるものは理由ではなくて、登場キャラクターが惹かれていると納得できる描写だ。
出来の悪い作品だと何があってもコイツは選ばねーだろと思えてしまったり、どう考えてもライバルキャラクターのほうが良いなどとなってしまったりするのだ。
その点本作は、ほとんどが塔野と花城の描写ということもあってか、言葉にはしない恋の芽生えを感じることができたし、何より、自分が躓いている壁を壊してくれる存在であるという互いに必要としている感は説得力があった。

つまり、想像もしていなかったロマンス的エモーションを含んだとても面白い作品なのだ。

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つとみ