「【”失くしたモノを取り戻すトンネル。”けれども、その為には自身の【時】を犠牲にしなくてはいけなくて・・。高校生男女の時を越えても過去のお互いの傷を乗り越え、想い続ける姿が沁みる作品。】」夏へのトンネル、さよならの出口 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”失くしたモノを取り戻すトンネル。”けれども、その為には自身の【時】を犠牲にしなくてはいけなくて・・。高校生男女の時を越えても過去のお互いの傷を乗り越え、想い続ける姿が沁みる作品。】
■”ウラシマトンネル”に入れば欲しいものがなんでも手に入ると噂されるトンネル。
過去に自らが欲したカブトムシを取るために木から落ちて亡くなった妹カレンの事を今でも想い、心の傷を抱える塔野カオル。
祖父の意志を継ぎ漫画家になるという夢を持ちつつ、両親に認められず花城あんず。
2人は欲しいものを手に入れるため、”共同戦線”を組み、ウラシマトンネルの調査を始める。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・今作は、原作小説を大幅にアレンジメントしてアニメーション化した作品であるが、”ウラシマトンネル”の中の幻想優美な紅葉が満開の美しさや、冒頭、ローカル線の暗い空から雨降る駅でのカオルとあんずの出会いからの”ビニール傘”をキーにしたラストの晴天下での二人の姿。
- 作品構成が巧い。-
・カオルとあんずが”ウラシマトンネル”に入って分かった事。それは、トンネルの”門”を越えると外界との時の流れが大きく違う事。
・それでも、あんずは亡き祖父の漫画原稿を求め、トンネルに入り原稿を得、カオルは”カレン”と書かれた小さな靴を得る。
・あんずが書いた漫画を読んだカオルは、彼女の才能に気付き一人でカレンを求めてトンネルに入る。そして、漸くカレンと出会うが部屋のガラスに映った自分は高校生だという事に気付き、カオルはあんずの元へ行くためにトンネルから外界に出ようとする。
・あんずは、既に漫画家になっていたがスランプに陥っている。彼女の傍にはカオルが貸してくれた”ビニール傘”が常にある。
・あんずは、意を決して”ウラシマトンネル”に入り何年も行方不明のカオルを探し、出会い”10秒で6時間のキス”を交わすのである。
■外に出た二人は13年が経っていた事を知るが、あんずも又トンネルの中に戻ったために8年振りとなる外界での再会となる。
カオルは高校生のままであんずは22歳。充分につり合いの取れる年齢である。
そして、二人は”行こう。”と言って現実世界に戻るのである。
<今作は、二人の高校生男女の想いが時を越えても続いているという、SFファンタジックラブストーリーである。
ガラケーでの二人のメールの遣り取りや、夏の田舎の何だか懐かしい風景も良き作品である。>