「花城さんの才能についてのお話」夏へのトンネル、さよならの出口 GOさんの映画レビュー(感想・評価)
花城さんの才能についてのお話
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前半はとくに「花城さんの魅力」で話が展開するのだけれど
そこでの彼女の描写はとにかく魅力的だ。
私たちは塔野の目から彼女を見ることになるのだけれど、
彼女は何か大きな秘密を一人で抱え、誰にも明かさず、
とても危ういストイックさを発揮している。
そして、主人公だけが花城に気に入られる。
それは出会いの駅での会話で花城の「両親はいない」に対して
「それはいいね」という「変な受け答え」をしたから。
それは、花城の気持ちを敏感に感じ取った塔野が、
自分の素直な気持ちと重ね合わせて自然に出た言葉だ。
この時の彼女には、塔野が「ある種の同士」に見えたのでしょう。
そういう二人の近づく流れも、自然に感じられる。
しかし、塔野の抱えた傷は、花城の想像をはるかに超える深いものだった。
後半はそういう「誰も救えないほど深く傷ついた塔野」を救う物語だ。
そして、花城は彼を「彼の地獄」から救い出すことに成功するのだけれど
それこそが「彼女の稀有な才能」なのだと思う。
彼女は一度、彼に拒絶されている。
ゲーム機がテーブルになっている喫茶店のシーンだ。
君はこちらの世界に来ない方がいいんだ。
彼の開きかけた扉は、このとき一度閉まってしまったのだ。
でも、彼女は13年かけて、大事な人を救い出す。
純愛物語であるこの映画は、「花城の稀有な才能」のお話として捉えることもできる。
もちろん、塔野の地獄めぐりの話としても捉えることができる。
そういう「物語の多層さ」が、この映画の良さではないかと思う。
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