「終盤で弾けるSF的カタルシスが鼻腔を駆け抜ける、晩夏にふさわしいジュブナイル」夏へのトンネル、さよならの出口 よねさんの映画レビュー(感想・評価)
終盤で弾けるSF的カタルシスが鼻腔を駆け抜ける、晩夏にふさわしいジュブナイル
海辺の小さな町の高校で噂されているのはそこに入ると欲しいものが何でも手に入るがその代わりに100歳年を取るという“ウラシマトンネル“。取り返しのつかない過去に苦悩する高校生塔野カオルはある日それらしきトンネルに遭遇、影のある転校生花城あんずともにトンネルの調査を開始する。
コバルトブルーの空の下で佇むセーラー服女子というポスタービジュアルとこのタイトルだけで絶対観ると決めていた作品なのでチラシの裏すら読んでなかったのは正解で物凄く新鮮でした。83分という短い尺なので恐らくは原作にあった様々な人物描写なり場面なりをごっそり端折って、慎重にトンネルの謎を紐解いていくくだりと2人それぞれが抱えるトラウマとの葛藤に大胆に尺を割いているので、終盤で一気に弾けるSF的カタルシスが鼻腔を駆け抜けました。説明調のセリフや描写を最小限に抑えて観客が自由に展開を想像出来る余地を残しているので実際には描写されていないものまでが残像のように胸に残る感じが切ない、堂々たる青春映画に仕上がっています。
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