劇場公開日 2022年11月11日

「前2作のような、子供に見せたくない「ノイズ」がない」すずめの戸締まり Jaxさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0前2作のような、子供に見せたくない「ノイズ」がない

2023年2月16日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

初めに、草太さん、予告だけ見ててっきり三十路前かと思っていた。すずめが高校生なのはわかっていたのでロリコン扱いしていてごめん…。

それはさておき、「君の名は」「天気の子」に比べて新海誠のポリコレ…というか倫理観がまともになったというか、オタクだけではなく子供や一般にも見せやすい作品になってきてホッとしている。
「君の名は」いちいち三葉の胸を揺らすシーンがあったし、入れ替わった瀧が胸を揉むシーンも気持ち悪かった。
「天気の子」はまともな大人が一人も出てこなかった。児童労働や風俗で搾取される(されそうな)子供を守る大人がだれもいなかった。
正直子供に見せたい作品ではなかった。

「すずめの戸締まり」にはそういった「子供には見せたくない」ノイズがない。
本作の大人は比較的まともだ。草太さんは未成年のすずめが巻き込まれるのを最初は良しとしないしできるだけ自分でなんとかしようとする。環さんは姪であるすずめを引き取り、やや口うるさいが、保護者としてなすべきことをしている。芹澤は成り行きで巻き込まれたのに環さんとすずめを故郷まで送り届けてくれる。

いわゆる「セカイ系」の作品においては、主人公の若者の周りの世界だけで物語が完結しがちだったが、成熟した大人をきちんと描くことで、意識が外の世界に向けられ観る者にもある種の成熟を促すようになったのか、単に新海誠が年を取ったのか、いずれにしても良い傾向だと思う。

ベルリンコンペにも出品されるようだが、受賞できるかは別として、この作品なら海外に誇ってよいだろう。

Jax