劇場公開日 2022年11月11日

「ファンタジーとリアルの関係」すずめの戸締まり 山の手ロックさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5ファンタジーとリアルの関係

2022年12月30日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

過去2作の裏テーマとして災厄との向き合い方を描いてきた新海監督が、風化しつつある東日本大震災の記憶を若い人たちに伝えていきたい、という強い思いを持っていることはわかる。でも、このような描き方で、その思いがうまく伝わっただろうか。
過去2作では「ファンタジー」を「リアル」に描くことで、人の想いの切実さや、一瞬のかけがえのなさを訴えかけてきたが、今作では「リアル」を「ファンタジー」で描く形となっていて、逆に訴求力が弱まり、言い方は悪いが「作り話」として流されてしまうおそれもあるように感じる。せめて、リアルに三陸を出さなければよかったのに。
ロードムービーにするアイデアは面白いが、最終目的地が三陸であることは最初から予想できるので、ハラハラドキドキ感はないし、旅先での出会いも深みがなく、全体として性急な感じ。
音楽と映像を連動させ、力尽くでカタルシスに持っていく新海監督の最大の持ち味が見られなかったのも、物足りないところ。
着想と意欲は理解できるので、もう少し時間をかけて練り上げてから、作品化してほしかった。

コメントする
山の手ロック