「鍵が導く心のままに🔑 新海くんってば、本当にジブリとエヴァと村上春樹と時をかける少女が好きなのねぇ。」すずめの戸締まり たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
鍵が導く心のままに🔑 新海くんってば、本当にジブリとエヴァと村上春樹と時をかける少女が好きなのねぇ。
女子高生の鈴芽と、「閉じ師」の青年・草太。日本を横断しながら「災い」を封じ込める、2人の奮闘が描かれたボーイ・ミーツ・ガール系ファンタジー・ロードムービー。
監督/脚本/原作は『君の名は。』『天気の子』の、日本を代表するアニメ監督、新海誠。
閉じ師の青年、宗像草太の声を演じるのは『坂道のアポロン』『劇場版 きのう何食べた?』の、SixTONESのメンバー、松村北斗。
鈴芽の育ての親である叔母、岩戸環の声を演じるのは『踊る大捜査』シリーズや『ステキな金縛り』の深津絵里。
環の同僚、岡部稔の声を演じるのは『おおかみこどもの雨と雪』『バケモノの子』の染谷将太。
スナックのママ、二ノ宮ルミの声を演じるのは『悪の教典』『ちょっと思い出しただけ』の伊藤沙莉。
草太の友人、芹澤朋也の声を演じるのは『千と千尋の神隠し』『君の名は。』の神木隆之介。
震災で亡くなった鈴芽の母、岩戸椿芽の声を演じるのは『言の葉の庭』『君の名は。』の花澤香菜。
まずもって言っておきたいのは、新海誠の最新作を「観に行かない」という選択肢は無い!
アニメファンにとって新海誠の新作というのはお祭りな訳です。そりゃ劇場公開されれば「うおー!楽しみだなぁー!✨」と喜び勇んで観に行きますよ。
こんな気持ちにさせてくれる監督は、日本では宮崎駿と新海誠くらいなもの。もはや新海誠は、そのくらい貴重な存在なのです。
『君の名は。』『天気の子』に続き、今回もディザスターを扱った作品。
しかし、前2作で描かれたのが架空の災害だったのに対し、今回扱われるのは東日本大震災という実際の惨事。
東日本大震災を娯楽映画で扱う。
この是非について、被災者では無い自分は口を噤みたい。
震災によって家族を失った人、家を失った人、故郷を失った人、そしていまだにPTSDに苦しむ人。
そう言った人たちしか、この件に関して口を挟む権利はないでしょう。
ただ、東日本大震災を描いておきながら、物語を結局は「キミとボク」的な閉じたものに仕上げてしまった、という点については少々幼稚さを感じてしまう。
3.11を描くのであれば、もっとそれ自体に深くコミットし、「キミとボク」のさらにその一歩先を行く物語にするべきではないか、と思うのですが…。
まぁこれは外野がとやかく言うことじゃ無いっすね。
もう言うまでも無いことですが、当然アニメーションのクオリティは素晴らしい。
このレベルのアニメを観られると言うだけで、「観て損した…🌀」なんてことには絶対にならない。
声優陣も素晴らしい仕事をしている。
草太を演じる松村北斗さんは、最初こそ「ちょっとヤバいかも…」と思いましたが、椅子になってからは違和感なかったです。
主人公・鈴芽の声を演じたのは原菜乃華さん。これはマジで素晴らしい👏
超絶倍率のオーディションを勝ち抜いたシンデレラガール。これで声優初挑戦とかなんでしょ。天才なんじゃないのか…。
新海誠の要石、神木隆之介と花澤香菜は今回も作品に参加。神木隆之介は3作連続、花澤香菜に関してはなんと4作品連続の出演である。もうこれガチ恋でしょ。小野賢章のことを世界一恨んでそう。
映像、音楽、役者は申し分ない。これらは申し分ないんです。
…じゃあそれ以外のところはどうなんだってことなんだけど…。
正直、脚本や設定はめちゃくちゃ詰めが甘い。
ロードムービーといえば聞こえがいいが、やっていることは場所を変えて同じことの繰り返しているだけ。
それをやっていいのはテレビシリーズやゲーム、漫画などの連続性のあるものだけ。長編映画向きじゃない。正直かなり退屈してしまった🥱
ボーイ・ミーツ・ガールは新海誠の十八番である。
ただ、今回の出会い方はいくらなんでもちょっと強引すぎるし、鈴芽が恋をするまでのプロセスが意味不明すぎる。イケメンならいいのかイケメンなら!えーっ💢
押井守の師匠として知られるアニメ監督の大家、鳥海永行さんが「ボーイ・ミーツ・ガールはドラマになり得ない」という旨の発言をしていたと聞いたことがあります。
本作を鑑賞していて、この言葉が頭から離れなかった。
確かにこれはドラマになっていない。あまりに唐突すぎる2人の出会い、そして旅立ち。この2人の人間関係が何よりもファンタジーだよ😅
設定も飲み込みづらい。
なんかヤバいものが吹き出す「扉」があって、それを閉じて回っている「閉じ師」という一族がいる。それはわかりました。
でもさぁ、そんな国家安寧に関わる重大事をたった1人の大学生が受け持っているってそれどうなのよ?
「宗像宗家の血筋しかこの封印は出来ないのじゃ」、とかそういう設定でもないっぽいし〜。
仮にそうだとしても、それをサポートするNERVみたいな組織が存在していて然りなんじゃないすか?
そもそもこんな日本中を彷徨き回る必要があるのに、教師と兼業とか出来るのか?
うーむ…。まぁ深くは考えないことにします。
それと気になったのは、サブキャラクターの扱い方。
まず、ダイジンというキャラクターの丸投げ感が酷い。結局何者なのか説明は無い。
そもそも、このキャラクターは鈴芽たちをナビしていただけで、「災い」が吹き出すこととは関係なかったんですよね?じゃあ一体なぜ「災い」が日本各地で吹き出し始めたの?何か理由があるのだろうか?
サダイジンというキャラクターについてもあやふやすぎる。
唐突に登場してパーティIN。もう少し自然に物語に絡める事も出来ただろうに。
結局なんだかよくわからんまま凄く体を張ってくれるけど、行動原理がなんだかよくわからん。
叔母さんの扱い方も上手くない。
描き方によっては環さんをもう1人の主人公として浮かび上がらせる事も出来たと思うのだが、前半部分で彼女の掘り下げを怠った結果、後半怒涛の如く色々なイベントをこなさなくてはならなくなってしまい、結局面白みのないサブキャラという立ち位置に収まってしまった。
鈴芽に心の内をぶちまけるという展開があまりに唐突すぎて笑ってしまったのだが、あれは本来鈴芽が家出をする前にこなすべきイベントだよね?そうしなかったせいで、環さん関連のストーリーラインが突貫工事のような不細工さになってしまっている。
一番酷いのは岡部稔とかいうキャラ。こいつ出す必要全くなかったやん。ただの染谷将太の無駄遣い❤︎
事程左様に、脚本や設定に丁寧さが欠けている為、凄く飲み込みづらい物語になってしまっている。
『君の名は。』や『天気の子』も多少のアラはあった訳だが、今回は物語の風呂敷を広げすぎた為か、そのアラが目立ってしょうがなかったです。
新海誠はもう少し小さめの物語の方が、その作家性を発揮出来ると思うのだが…。
とまぁ色々書いてきましたが、今回の一番の問題点はコレ。あまりにも他所からの影響を受けすぎていること。そしてそれをうまく消化しきれておらず、そのまんまの形で出してしまっていること!
例えばこの「閉じ師」という設定。
闇が噴き出す扉があって、それを特別な鍵を使って閉めて回る…?いやこれ、『キングダムハーツ』の設定そのまんまですやん。ディズニーを敵に回すと怖いっすよ…。
地震を引き起こすミミズと戦う…?いやこれ、村上春樹の「かえるくん、東京を救う」そのまんまですやん。やれやれ。
そして何より、今回はジブリの影響をモロに受けすぎ!
もう既視感バリバリで、ほとんどパロディ作品みたいになってました。
特に『ハウルの動く城』っぽさがあまりにも強すぎる。草太の声がジャニーズだったのも多分ハウルを意識したんでしょ?
扉の向こう側に昔の光景が広がっているという展開もまんま『ハウル』。宮崎駿がこれを観たら鼻で笑いそう。
キスしたらどうこうというのも『紅の豚』ぽかったし、『耳をすませば』へのリファレンスもあったし…。これがジブリパークですか?
何より酷いのが「ルージュの伝言」をそのまま使用するという節操のなさ。ここは本当に、悪い意味で鳥肌が立った…。
新海誠の過去作に『星を追う子ども』という問題作がありますが、今回はそれを観た時の感情が蘇ってきた。
新海くん、ジブリが好きなのは知ってたけど、次からはもう少しジブリ愛を抑えようか💦
ミミズのルックが『エヴァ』っぽかったり、制服少女が時間を飛び越えるというのが『時をかける少女』っぽかったり…。
死んだ親だと思っていたら実は未来の自分でしたー、という展開は『ハリー・ポッター』で観たよなぁ。
とまぁ、今回は新海誠が好きなものだったり、これやったらウケんじゃね?と思っていることだったりがこれでもかと詰め込まれている。
ある意味では新海誠節全開というか、新海誠の総決算と言えるのかもしれないが、そういう事じゃ無いんじゃないの?
総評として、今作は明らかに作劇のバランスが悪いし、他作品からの影響があからさますぎる。
失敗作とまでは言わないが、不恰好と言わざるを得ない作品であると思います。
もちろん今後も新海誠作品は追って行こうと思いますが、次回作はもう少し丁寧に脚本や設定を練り上げて欲しい。
やっぱりたなかさん!
もぉ〜たなかさんのレビュー(ツッコミ)読まなきゃ消化出来ないと思い探しましたぜ!
たなかさんレビュー読んでスッキリ〜!ありがとうございます!!
mizuhowakaさん、コメントありがとうございます♪
流石新海誠だけあって、映像とかキャラクターの演技とかは一級品なんですが、やっぱり物語の浅さは気になりますよね💦
震災を扱うのであれば、もう少し被災地や被災者の人に寄り添った物語にして欲しかったと、私も思います🙇
感想面白かったです。この映画1人でみたんですが、なんかあっという間に終わったと言う感じで良い映像だしキャラもわかるんですがなんだろう心に何にも残らなくてどう受け止めれば良いのかって感じでしだ。
地震、震災がどうこうとかもなんだか上部だけなんだな。
震災を忘れてはいけないし、日本は地震大国で世界からみたらかなり稀に思われている。
だからこそ正面から向き合うべきなのではと思いました。
たなかなかなかさん、ほぼ同意見です。災いが噴き出したのは、鈴芽が要石を抜いたからだと思いますが、設定がきちんとしてないですよね。 ダイジンとサダイジンは要石となって災いを防ぐ神様みたいですが、普通なら、神様が呪文をかけた石で扉を封印しますよね。それなら、石を抜いたせいで災いが飛び出すのもわかります。石自体が神様なら、抜かれても逃げるはずがないです。でも閉じ師の草太を活躍させたいから閉じ師が鍵をかけたり要石で封印するという設定にし、その矛盾点を、「神は気まぐれ」というセリフでごまかしていますね。