「「君の名は」の完成度がいかに高かったかを感じさせる作品」すずめの戸締まり マカロニさんの映画レビュー(感想・評価)
「君の名は」の完成度がいかに高かったかを感じさせる作品
「新海誠」という高すぎるハードルのせいで、前作2作と比較すると少々ガッカリ感のある作品。
通常基準のファンタジーアニメであれば、映像、迫力、音楽、どれをとっても文句なし星5の良作である。
しかし、「君の名は」、「天気の子」に比べると、ファンタジー要素を全面に押し出しすぎたような気がする。
さらに、「君の名は」では、美しい田舎×美しい都会の綺麗な映像のコントラスト、「天気の子」では東京メインの綺麗なビル街の再現度×綺麗な空、と言った「映像美」の面が評価されたこともあり、今作も同様に、日本の中の都会と田舎のコントラストを意識した映像美に力を入れた模様。
映像は前作以上にハイレベルなものが見れたと評価する。
しかし、ストーリー面を見ると、今作の浅はかさが露呈する。
まず第一に、前2作で感じられたキャラクターの絶妙なバランスに欠けていた。
ソータが終始イスの状態ですずめと同行することには少し驚いたが、叔母であるタマキさん、セリザワ、ルミさん、チカあたりのキャラクターが、主人公とその場凌ぎの関係であり、気薄に感じられた。
前作、前々作のように、仲間で協力して問題解決に取り組む、それぞれができること、自分の役割を明確に持った上で本作に登場するなどのことが本作ではできていなかった。
終始ヒッチハイクでの冒険旅のような雰囲気が漂い、感じ的にはクレヨンしんちゃんの宇宙人シリリやラグがキングダムの冒険旅と同レベルと評されても過言ではない。
また、本作は前2作に比べ、感動シーンが決定的に欠如していて、メッセージ性に欠けていた点が指摘できる。
また、前2作では、RADWIMPSの劇中歌と共に描かれていた主人公と周りのキャラクターの関わりの日々が今作にはなく、すずめがソータを想う気持ちに違和感を感じざるを得なかった。
歌の点でも原点要素が垣間見え、前2作であった、劇中のRADWIMPSの曲と共に流れるスキップシーンによる流れ造りがなく、ただ次々に扉に鍵を閉めていくという、単調なストーリー展開に感じられた。
後半部では少しシリアスなシーン(叔母の駐車場、突然の左大臣など)や、セリザワによる、ドライブの曲選、車の崩壊シーンなどのコメディ要素が加わり、前半の単調な展開を少しは払拭できたよう。
だが、全体的に見るとやはり構成のバランス、感情移入、キャラ設定と役割といった面で減点が見られた。
改めて言うが、普通にファンタジーアニメとして評するならかなりレベルの高いものだが、涙腺崩壊シーンはなく、「君の名は」や「天気の子」のレベルの高さが垣間見える作品だと感じた。
「君の名は」を原点として、「天気の子」はちょっとはずれたところに向っていて、そのはずれ方をさらに2倍にして大きくはずれたのが今作「すずめの戸締り」なのかも知れないと感じました。