「テレビシリーズの後日譚と残った伏線を回収しつつヒーローのユニバース物としてファンサービスの満点映画」グリッドマン ユニバース ミラーズさんの映画レビュー(感想・評価)
テレビシリーズの後日譚と残った伏線を回収しつつヒーローのユニバース物としてファンサービスの満点映画
今回の映画は『SSSS.GRIDMAN』と『SSSS.DYNAZENON』のテレビシリーズを見てからの鑑賞をオススメするが、初見でも問題がないと思うし、文化祭で上演する劇のシナリオを書く体裁で粗筋も説明してくれるので、ある程度の内容が分かる仕組みなっているのは作劇としても上手いと思う。
ただアニメ版の元になった特撮番組を原作にした正式続編にも、なっているのがややこしいかも。
今回の作品は、アニメ版でグリッドマンと同化した事で生じた、響裕太の記憶の空白を救う話でもあり、同じ図式でもある初代ウルトラマンとハヤタへのアンサー的な役割もあると思う。
アニメ版でグリッドマンと同化して怪獣と闘う響裕太は、冒頭から記憶がなくしヒロインでもある宝多六花と知り合い親しくなる。
しかし実はその時の人格はグリッドマン側に属するもので、本来の人格と記憶ではない響裕太が、劇中の数ヶ月を好意を持っていた女性と過ごして親しくなっていくが、最終回では目覚める事もなく終わり、本作で最初に明かされるのは、六花や友人の内海将にある共通の思い出も記憶も持ち得ない空白を抱えた少年であり、捉え様によっては、とても残酷で切ない。
本作は響裕太の記憶の空白を救済する物語でもありながら、ヒーローでもあるグリッドマンが、計らずも数ヶ月の青春時代の記憶を奪ってしまった裕太への贖罪や負い目が、実は作品の軸にもなっている。
テレビ特撮番組の名作でもある初代『ウルトラマン』では、ウルトラマンと同化したハヤタも本作の裕太と同じ構図であるが、ハヤタは第一話と最終回では本来の人格が少し描写される点があるが、その前後の記憶がなく空白になっている。
最終回でゼットンとの闘いに敗れたウルトラマンが、ハヤタと分離して本来の人格が戻る形でハッピーエンドになっているが、その後のハヤタに追求した後日譚は、一応あるが自分は未見。(ムラマツ以外のオリジナルキャスト集合で、金子修介監督の作品だか、総集編とドラマのあるファンディスク扱いで見るの難しいらしい)
本作はその点へのアンサー的な役割もあると思う。
ネタバレあり
個人的に良かった部分では、 『SSSS.DYNAZENON』では個々に問題を抱えててバラバラだった連中をまとめて、前に進むきつかけ与えて、そして消えて行ったガウマ(レックス)の再登場とその悲しい過去にも、唐突!かつ、あっさりケリをつけてくれた部分はトボケた味わいもあり良かった。
やはり大石マサヨシの主題歌が流れる合体変形や戦闘場面はテンションが上がり多少の粗な部分を忘れさせてくれる。
『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』以降のアニメ作品に定番となっている文化祭の準備に沸く学校に、ダイナ組も合流しての共同作業を行うところや六花の家に新世紀中学生とダイナ組が居候するわちゃわちゃは、多幸感もあり愉快な部分でもある。
轟裕太と宝多六花を演じる広瀬裕也さんと宮本侑芽さんも久しぶりに裕太と六花を本格的に演じているが、グリッドマン放送時から続くラジオ番組で、現在も仲良く共演している影響かブランクを感じさせずに、当時の自然体な演技を披露して作品の一応の完結編としては内容も含めて素晴らしいと思う。
裕太が力尽きた時に手助けしてくれるバイカーは、特撮版『電光超人グリッドマン』で主役でもある翔 直人を演じた小尾 昌也氏が担当してる。
小尾氏はアニメ版の頃からゲストで声出しをしてくれていたが、本作では私生活で関わりの深いバイク乗りでもある本人役で登場して裕太を救う場面は、ヒーローのバトンを渡す意味でも正にマルチバース!
(以前『SSSS.GRIDMAN』のイベントやゲスト出演してくれた頃に、頭のオカシイ輩に嫌がらせ受けた事もあるのに、律儀に出演してくれるのはありがたいことです。一部常識のないファンやオタクが存在するのもとても残念な話…)
気になるところは、今回の悪役の正体や計画がやはり唐突に感じる部分もあり、その強さも判り難い印象があり序盤の何処かでそれを匂わせるところはあっても良いのでは?と思うが、これだけ小ネタを集めている作品なので、構成バランスを考えての判断なのか。
出来れば六花の家に居候する件で裕太と内海も参加して食卓を囲む場面があった方が結束感や味わいが増したと思う。(いわゆる同じ釜の飯)
今回、六花の兄がキチンとした役で登場したが、父親の姿は結局未確認なのはチョイ残念。アレックス役の稲田徹さん(TRIGGER作品の常連)が以前に確か音声ドラマで六花パパを演じていたハズだが、せっかくなので登場して欲しかった。(雨宮監督脚本の音声ドラマでもあの家族は、ママも含めて少しヘンなところがチョイチョイあるので、その辺りも見たかった)
個人的には、アニメのテレビシリーズが結構気に入っていたので映画化発表から楽しみにしていて初日に見参したので今回の出来は、サービス満点で満足かつ満腹で、更に微笑ましい告白のラストにも、一つの作品が完結した充実があり、スタッフエンドロールあとのネタ落ちなども、本家マーベル風なので尻尾まで楽しかった作品でした。
余談
最後に裕太とグリッドマンが別れる場面の背景は、良く特撮ヒーローモノでロケされる場所にそっくりだと思うけど、確か『電光超人グリッドマン』の最終回でもロケしたような?
ヒロインの宝多六花の名前て『電光超人グリッドマン』のスポンサーがおもちゃのタカラだったので主力商品のリカちゃん人形からきてるのでは?
翔直人役だった小尾 昌也氏の登場も良かったが、馬場一平 の 須藤丈士氏とも未だ付き合いがあると小尾氏がインタビューで述べていたので、今回登場して頂ければ二重のサプライズになったであろう。(願望ですが)