「信友直子監督が自身の両親を撮った『ぼけますから、よろしくお願いしま...」ぼけますから、よろしくお願いします。 おかえり お母さん りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
信友直子監督が自身の両親を撮った『ぼけますから、よろしくお願いしま...
信友直子監督が自身の両親を撮った『ぼけますから、よろしくお願いします』の続編的作品です。
昨年、短縮版的作品がテレビ放映されており鑑賞しているので、前作以降どのようになったのは知っている上での鑑賞です。
広島県呉市で暮らす信友直子監督の両親。
母親が80歳を過ぎてから認知症を発症し、それまで家事など一切していなかった90歳を過ぎた父親が、介護と家事を行うようになった。
その老々介護ぶりを撮ったのが前作。
それから・・・
映画公開の直前、母親は脳梗塞を発症し、自宅の食卓で倒れ、そのまま入院となってしまう。
父親は毎日1時間かけて入院先へ面会。
そのうち、父親も身体に異変が生じ、鼠径ヘルニアと診断され、手術することに。
母親の病状は少し恢復するが、再び脳梗塞を発症・・・
という展開。
前作の後、老々介護がどうなったのか?と思っていたら、突然の母親の入院で劇的な展開となります。
実際の出来事なので、うわぁぁぁということになるわけですが、劇映画でこんな展開の脚本を書いたら却下されるだろうなぁ、と思ったりしました(すみません)。
それにしても驚かされるのは、父親の生命力、その力強さ。
妻の入院も、毎日の面会が苦になるどころか、日々の生きがいのようであり、ヘルニア手術後も翌日からリハビリへ取り組み、妻が自宅へ戻って来たときのために筋トレに勤しむ。
生きるということは毎日の務めであることを改めて実感しました。
副題の「おかえり お母さん」は、二度、母親が帰宅することを表わしており、ひとつは認知症が重くなり、転院せざるを得なくなった際、短時間の自宅立ち寄りの際、それまで無反応だった彼女が感情を露にするところと、もうひとつは最期を迎えた彼女が骨となって遺影とともに戻って来るところ。
お母さんには自宅が似合う、それは写真になっても、そうでした。
父親はひとり遺されてしまうわけですが、多くの場合、気が抜けたようになるでしょうが、信友監督も頻繁に実家に戻り、お父さんの日常をZoomで配信している。
いやぁ、まだまだ長生きしそうです。
長生きしてください。そう願うのでした。
前作が老夫婦の老々介護のドキュメンタリーだったとしたら、本作は老夫婦の永年連れ添った愛の軌跡のドキュメンタリーといえるでしょう。