「国家の垣根を超えた5人の「くのいち」チームは人類滅亡への導火線の火を消せるか?」355 スモーキー石井さんの映画レビュー(感想・評価)
国家の垣根を超えた5人の「くのいち」チームは人類滅亡への導火線の火を消せるか?
本作は各国のインテリジェンス機関の女性エージェントたちが後述の「デジタルデバイス」兵器を奪い合い、互いに格闘していくのも束の間、自分達以外のもっと大きな敵対勢力の存在に勘づき、呉越同舟的・偶発的に
ドリームチームを結成することとなり、兵器奪還の為に各人が命をかけ、人類滅亡を阻止する物語である。
そんな彼女たちが追う「デジタルデバイス」とは、
世界各国の金融市場や核開発施設など社会に張り巡らされたあらゆるシステムを乗っ取り、操作できる持ち運び可能な究極の「サイバー兵器」であり、
ブロックチェーン技術すらもはやその意味をなさず、MI6の優秀なサイバー担当エージェントでさえそのアルゴリズムの複雑さから「poetic」と皮肉を込めて表現されるほどの厄介な代物だ。
そして、本作の見どころは豪華俳優陣の「お色直し」ありのアクションシーンと世界を股にかけたバリエーション豊かな「場面展開」である。
また、ストーリー的にはもう一捻り欲しかったが、主要5人の登場人物それぞれの「強さ」と「弱さ」を描写の上、民族や人種を超え、法律でも上司の命令でもなく、それぞれのエージェントたちが持ちあわせている「正義感」とミッションを乗り越えることで育まれる「絆」であろう。
もちろん、お約束の「身内の裏切り」、「世界を牛耳りたいというくそ野郎どもの欲望と妨害」、「組織に蔓延る汚職や腐敗」、そして、現代は未だに「男尊女卑」の名残ある時代であり、まだしばらくは変わりそうもないと思わせてしまうリアルな残酷さというところか?
それは結末を含め、作品の所々に表現されているように感じた。
最後に以下は結末の完全なるネタバレとなる。
世界を救った彼女たちチーム「355」は追われる身となる。(少なくともCIAのメイスとBNDのマリーは元いた組織には戻れないだろう)
かたや私欲に溺れ人類滅亡の危機に加担した「裏切り者」は組織の中で出世するという何とも言えないラストとなる。
(もちろん、その裏切り者にはちゃんと彼女たちがきちんとお灸を据えるのだが)
ちなみにコードネーム「355」とは、アメリカ独立戦争下で活躍されたとされる正体不明の都市伝説的な存在。
まさに女性スパイの鑑なのだが、
それはあくまでも表向きの見方。
実際は、物語のラスト主人公メイスがまるで自分たちのことのようにコードネーム355について語ったセリフにある世界にあえて伏せられたという解釈だ。
もし、真の英雄が実在の355や本作の「355」のメンバーのように組織にとって疎ましい存在として意図的に隠ぺいされているのだとしたらと考えるとやはり漠然としたやり場のない不信感は拭うことはできない。