「一言で言えば100分尺のプロモーション映像を見せられた感じ。」バブル alpinixさんの映画レビュー(感想・評価)
一言で言えば100分尺のプロモーション映像を見せられた感じ。
タイトルに書いた一文でぼぼ以上、なのだがまあ蛇足で感想。(期待値高かった分かなり長くなってしまった。)
事前告知やプロモーション映像で期待して待ってました。何より映画オリジナルシナリオで、錚々たるあの制作陣。コケ映画フラグの可能性も若干感じられつつも、ネットフリックス先行勢の評価が出始めるまではシンウルトラマンより期待値は高かったです、が。
先行勢の「絵は綺麗()」という酷評は知った上で、劇場で見て納得した。
パートごとの映像は確かに綺麗。可愛いキャラがグリグリうごく格好良い映像が次から次へと繋がっていくのは壮観ではある。アップになると絵柄が変わって気持ち悪いという意見があったが、昨今のテレビクールアニメで多用されてる技法なので、演出の一つとして全然ありだろう。(記憶ではPAWORKSのVIVIでよく見た)
ただパルクールの動きはCG使いまくりで、カメラワークはどこかでみたような映像(まあ、進撃が下敷きなのは自明だが)なので感心はするが感動までではなかった。ドローン映像をアニメ化したようなといえば分かりやすいか。
人魚姫を下敷きにしていることを全編で訴えてるので(喋れないウタが人魚姫の一節だけは明らかに内容を理解した上で話すのはちと違和感。これくらいしかセリフつけられないのでしょうがないのかもしれないが影ナレの方が良かった気も)、虚淵演出という事前情報もあってラストの悲劇にどう持っていくのか、という点に収束してしまっている。
人魚姫オマージュしてますアピールはもう少しぼかしてもよかった。序盤からくどい。
個人的にはバブルの説明が少ないとか、世界観が分かりにくいとか。そういうのはあまり気にならなかった。むしろよよアニメオリジナルで新規設定でよくここまで作り上げたな、という感想。足りない箇所は全然脳内補完できる程度には材料は揃ってたと思う。ここら辺は流石の虚淵。
むしろ気になってストーリー(ある意味無いのだから気にする必要もないのかもだが)に没入できなかったのは、細かい設定や登場人物の行動の整合性が取れてない点。
例えば、最初にウタがチームに入れてもらう下りはいくら恩人?としても違和感あるし、全員何の疑問なく受け入れるご都合主義で済ませている。
誘拐された見返りに試合を申し込む悪役も行動原理(そもそも普通に申し込めば良かったのでは?それとも主役チームが断ったから?その辺の説明無)が不明だし、その誘拐犯相手にルール通りにパルクールの試合を受ける主人公はじめ他チームの連中の行動も受け入れがたい。何か説明されていない〝バブル内の独自ルール〝があるのかも知れないがそれがないので、見てる方はストレスが溜まる。マンガ版だとその辺しっかりいくようになつてるのかも知れないが。
超常現象的な回想シーンはまあそういうもんだと納得できるのだが、ウタの左手を掴んだ瞬間に明らかにおかしい描写があったにも関わらず、その後夜の花壇シーンで本気で気づいてないのか垂れ下がった袖には目もくれず、主人公ヒビキが好意を丸出しで近寄るのはどうなんだ?恋は盲目?という伏線なのか?それにしてはパルクールで一緒に飛んでいる横顔を見ただけで恋に落ちる演出はチープすぎはしないかと。
また、主人公が悪役チームに勝った祝勝会でデレる台詞があるが、勝ったのは贔屓目抜きにウタの功績大なのにリーダーの肩を持ちすぎでは。よく試合を振り返ると、ヒビキがチームとの結びつきを強めた描写ってリーダー踏み台にして渦を、飛び越えたくらいしか無かった気が。
他にも登場人物の台詞や行動に整合性取れない(説明不足)があるが、それらが積もり積もってストーリーのテンポを削ぐことになってたと思うんでふよね。
シンウルトラマンは逆にそういう細かいところが、後で振り返ってみるとすごく作り込まれていて、例えば主人公が未知の文化を学習する描写が、どちらの映画にも同じ演出で出てくるのだけど、両方見ると説得力の差が如実に出ていた。実写の役者の演技力とアニメ絵のハンデはあるが。
ただ全般的にそういう細かいところを気にしないでウタ可愛い&可哀想、主人公のツンデレ良き!でみる分には、おもしろい映画だと、なら尚更他人も書いてたがなぜネットフリックス先行なんだ。
横にそれるが、グッバイドングリーズに続いて劇場オリジナルシナリオの映画の難しさが一層明らかになったと思う。ジブリやシンカイの凄さが改めて再認識される。オープニングの東京は天気の子?だし、エンディングの赤→青の演出はナウシカか?だし、アイコン的な演出は手垢がついたのが多かった。
渦と輪廻の連想からのラストの救いと再生への前振りだけは、綺麗に成立したかな、とは思う。ただしこれも渦の話くどく出し過ぎでパヤオならもうちょいクールに伏線回収したとは思う。戦争の映像要らん、キャシャーンの二の舞になるぞ。
因みに本家パルクールに映画で出てきたようなビーチフラッグス的な競技は見つけられなかった。劇中の5対5対人戦はオリジナルルールなのだろう。冒頭の棒説明がなぜ棒なのかはそれで納得した。
挑戦的な取り組みだからしょうがないとは思うが、このコケカタだと、ネットフリックス先行配信は今後流行らないのではないかと危惧する。もしかすると製作費のかなりな部分をネットフリックスから供給受けてるのかもしれないが。
ラストパートは無い方が良いかな、と見た直後は思ったが、輪廻の伏線回収の意味で(もう少し余韻のある演出に寄せた方がよかったが)あれはあれで良いかなと思いなおした。
期待高かったのと、コナン、シンウルトラマンと良質な映画を、見たあとだったので星2としたが、映画オリジナルシナリオの作品としてはよく睡眠はとった上で、劇場で見るべきとおすすめする。