「3が楽しみ過ぎる傑作。」スパイダーマン アクロス・ザ・スパイダーバース まままさんの映画レビュー(感想・評価)
3が楽しみ過ぎる傑作。
まず第一に映像がすごい。
それぞれのバースの異なるタッチを違和感なく馴染ませている。
水彩画タッチなんてすごい魅力的。
話の展開としても、実はマイルスは他次元の蜘蛛に噛まれいてた、遺伝子が異なるから別の次元に戻されてしまう、そこではスパイダーマンは不在、自分がヴィランだった、なんて盛りだくさんで、アニメとしては長い時間でも十分な密度がある。
そしてマルチバースに関して。
マルチバースが今作も含めてやたらと様々な作品で登場しているがそれは、概念への観衆の馴染みも一因ではあるだろうが、何より今の社会との共通点があるから。
SNSの普及により自分の、今の自分以外の可能性を知ることができたのとリンクしてる。
それによる虚無感との戦いが『エブエブ』
それによる悲劇への慈しみが『ノーウェイホーム』
また悲劇の受容が『フラッシュ』
(コンピューターが普及した際にマトリックスやそれに似た空想世界の話が増えたのと似ている)
スパイダーバース1はエンタメに徹していた印象だが、スパイダーバース2はそういう哲学的な葛藤がメインの印象(総じて運命を変えろ的な感じではあるが)
フラッシュが描いたものやこれまでのマルチバースやタイムスリップもので描かれていたものは、過去の悲劇をなんとか無かったことにできないか→ああ、やっぱりそんなことは無理だ→受け入れるしかない、といった流れの過去の悲劇・喪失をいかに受け入れるかという話。
それと混同されそうだが今回はだいぶと違う。
悲劇の受容が義務化されており、マイルズにとって未来の悲劇を受容しろという内容になっている。
みんなも我慢しているんだから我慢しろという風に。
今のアメリカが厳密にどうなのかは知らないが、むしろ今の日本にこそその風潮は強く、いわゆる悟り世代の悟りに似ている。
そういうものなのだからどうしようもない。努力をしても無駄だ。
そういう悟りへの挑戦になっている。
ものすごい熱い気持ちにさせられた。
傑作の1をさらに超えてきた2。ターミネーターや初代スパイダーマンくらいに傑作。
共感を有り難うございます。
おっしゃるように、「今の自分以外の可能性を知ることができた」のは夢に近いとしても、大きいですね。別の「自分」が有り得ると思えば、悟りの次へ行けるかも知れないです。