「多様性と運命とシャドー」スパイダーマン アクロス・ザ・スパイダーバース SP_Hitoshiさんの映画レビュー(感想・評価)
多様性と運命とシャドー
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「多様性」をそのまま映画にしたような物語だなと思った。異なるスパイダーバースを絵柄の違いで表現するのが面白い。映像の美しさ、楽しさ、疾走感がすばらしく、まさしく観て楽しむ芸術品のような映画。
ストーリーのテーマは「運命にあらがえ」みたいな感じ? 主人公にそこまで感情移入できなかったので、あまり心に残るものがなかったし、話が途中なのはマイナス点。次作が公開されるころには今作のこと忘れてそう。
最後のドンデン返しは面白かった。主人公が帰ってきたと思ってた世界は主人公の世界じゃなくて、「スパイダーマンが生まれなかった世界」。その世界にいるもう一人の自分は、「クモに噛まれなかった場合になっていたであろう自分」。
つまり、ユング心理学的にいえば、シャドー(生きられなかった自分の反面)ということになる。「多様性」と「運命」と「可能性としてのもう1人の自分」という3つは、何か深い物語になりそうな予感もする。
「運命」をテーマにした場合、定型的な物語だったら、「悪い運命を破壊し、自分自身が未来を決める」というオチになりそうだけど、この作品でそれをやったらあまりに安易だ。スパイダーマンというヒーローの本質は、「身近な人の死を通して自身のあやまちに気づき、深い後悔を通して真の正義に目覚める」ところにあるように思うからだ。このスパイダーマンの呪われた運命を安易に回避したハッピーエンドにはしてはならないし、しないと思う。
次作に少しだけ期待しておこうかなと思う。
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