「静寂の中で展開するマルチバース・アクションの魔力」スパイダーマン アクロス・ザ・スパイダーバース 清藤秀人さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0静寂の中で展開するマルチバース・アクションの魔力

2023年6月19日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:試写会

楽しい

2018年に公開された『スパイダーマン:スパイダーバース』は様々なバースから複数のスパイダーマンが集結して来るというアニメならではの発想を最新のビジュアルで具現化した傑作だった。そして、この続編は空間設定だけでなく、スパイダーマンことマイルス・モラレスの"成り立ち"そのものを大胆にリセットして物語は展開する。それにプラスして、スパイダー・グウェンことグウェン・ステイシーのストーリーが被さり、前作を超える数のスパイダーマンたちが各バースから集結する。その目まぐるしさは半端ないのだが、前作同様、巧みな視覚演出が観客の集中力を途切れさせない。

今回、特に凄いと感じたのは、レゴのスパイダーマンや実写のスパイダーマンが顔見せ興行よろしく現れては消えていく、独特の軽さと前作を超えるスピード感だ。そのグラフィック・コミックをめくるような軽快な展開は、伝説のPVとして語り継がれるア・ハーの"テイク・オン・ミー"を彷彿とさせる。つまり何が言いたいかと言うと、めちゃくちゃ洗練されているのである。さらに、音量を最低限に抑えて、全てが静寂の中で進行していくサウンドエフェクトにも感心する。

主軸となる"運命は自分で決める"というテーマにも合点がいく大ヒット・シリーズのリブート第2作。早く次が観たい。

清藤秀人