「期待通りだが期待を超えては無い」スパイダーマン アクロス・ザ・スパイダーバース ピータンさんの映画レビュー(感想・評価)
期待通りだが期待を超えては無い
起:グウェンの物語から始まる構成は予想外だった。彼女の孤独感は胸を打つし共感してしまう。主人公のマイルスが出てくるまで結構時間がかかるけど、導入としては本当によくできていた。
承①:序盤は良かった点が3つとモヤった点が1つ。まず「マイルスとグウェンのイチャイチャ最高!」という点。なんだあのスウィングデートと逆さま寄り添いは!お似合いすぎるだろ!普通にラブな展開をぶち込んできた事にどこぞのインド人と同じく「恋が始まりそうでまだ自覚ないのいいねえ!」と叫びそうになった。また、「スパイダーインディアンとスパイダーロックのキャラが良かった」ことも挙げられる。他アースのスパイディの中でマイルスの味方となる二人だが、どちらも熱い心と止まらないスパイダージョーク(軽口)がスパーダ―マンらしさ全開で一気に好きになった。インド人はお調子者でロッカーは反骨精神バリバリなのね。さらに「今作のヴィランであるスポットのキャラも良かった」。人によってはラスボスが小物すぎるのが気にくわないって人もいるだろうが、私はあのふざけた言動とおちゃらけた態度のヴィランからマイルスに対するドス黒い憎しみが漏れてくる恐ろしさとどことない親近感が好きだ。モヤった点は、「マイルスと両親のすれ違い描写なげえなあ」かな。もちろん作品の根幹なので丁寧な描写が求められるのは分かるんだけど、ピーターがグウェンやMJに正体を明かせなかったのとは別で、マイルスは相手が両親なんだから、さっさと正体明かしちゃえばいいのにって思ってしまう。「親が子供を信用して子供のやりたいようにさせる」ってことも大事なのはわかるけど「子供が親を信用して全てを打ちあける」方が断然ハードル低いのになあって。実際グウェンは父に正体明かして関係が前進したし、マイルスも結局明かすんだし(未遂に終わるが)。まあこの要素はスパイダーバースという作品の最重要事項だと思うので次回作には解決するのだろう。
承②「スパイダーマンは大切な人を失う運命からは逃れられず、それを時空レベルで捻じ曲げると世界が大変なことになる」ので「大切な人も世界もどっちも守ると誓うマイルスと世界を救うことを優先する他アースのスパイディで対立する」という構図は予告の時点で分かり切っていたからそこに驚きは無い。また大量のスパイディに追いかけられることも分かってた。分かってたうえで、期待通りのものをそのままお出ししてもらえたって感想。蜘蛛人間が飛び交いまくり、何がどうなってるのか目で追いきれない凄まじいアニメーションだったが、私はその「目で追いきれない」を期待していたのでとても良かった。まあ沢山仕込まれていたであろう小ネタは半分も拾えてないと思うけどね。あとあんな大量のスパイディから一人で逃げ切れるって、実はマイルスという男はピーターパーカーよりもスパイダーパワーの適性が高かった説があるのでは?あとピーターBパーカーが「マイルスに出会えたから俺はMJとやり直すことができたんだ!」という発言について、教え子に弱みとも言える自分のことをさらけ出して感謝できるところが、あいかわらず頼りなくて情けないけど最高にかっこいい男だなあと感じたね。
転:「マイルスがたどり着いたのは元の世界ではなく、自分を噛んだ放射性の蜘蛛が本来住んでいた世界(スパイダーマンの存在が無くなってしまった世界)」という展開は「やられた、そう来たか!」と思ったし、「そのアースのマイルスはすでに父を失っており、闇落ちしてプラウラーになっていた」という展開も予想を裏切られて衝撃的だった。衝撃的だったけど…個人的にはこの時点で時間的にも「あーここまで広げた風呂敷は今作では回収しないんだな」と気づいてしまい、アーロンおじさんとのホラーな再開も間延びしているように感じてしまった。まあ次回作でこれらを綺麗に回収してくれるなら一気に100点付けるけど、現時点では「評価不能」かな。
結:というわけで、今作は「結」はなく「次回に続く」で終わる。ただ、グウェン、ピーターBパーカー、ペニー、ノワール、豚、インド人、ロッカーがみんな揃ってマイルスを助けに行くラストシーンは熱かった。
そうなんですよね、次作ありきの展開ですよね。
中ボス倒すとかして一旦区切りつけてほしかったですね。
伏線回収に時間取られて、
レオパルドン出るヒマないんじゃないか(笑)