「番狂わせ」ロスバンド ブレミンさんの映画レビュー(感想・評価)
番狂わせ
自分は普段ミニシアターで働いているのですが、休憩中に先輩の方からこの映画の事を教えてもらいました。バンドが大好きなので、こういうフィクションのバンドのロードムービーって久しぶりだなと思い、少し足を伸ばして映画館へ。
最っっっっ高でした!まさかここまでとは…!この映画が4年も封じ込められていたなんて勿体ない!いやでも時間がかかってもこの作品を観れたことに感謝すべきか…!
バンドメンバーが最初は2人でどんどん集まっていき、最後の最後で形になるという王道ながら良いストーリーでした。ギター・ボーカルのアクセルギターはは確実に上手なのに歌がとっても酷い、しかもタチが悪い事に当人は気づいていないという見事なまでに共感性羞恥を体現したかのような人物です。しかも面白いくらいポジティブで、それが裏目に出て好意を抱いている子に鬱陶しがられるというとても哀愁に満ちた子でもありました。そんなアクセルと共にバンド活動を続けてきたグリムはかなりの苦労人で、音痴な歌を編集したり、音痴な歌に耐えたり、面倒くさい両親に挟まれたり、と序盤だけでもその大変さがひしひしと伝わってきました。その2人のバンドのベースポジションにチェロを持って入ってくるのが9歳のティルダ。このティルダがとにかくキュートで、9歳とは思えない落ち着きっぷりを見せつつも、道中ロックを聴くと自然とシャウトしたり、アクセルの歌に顔を顰めたりと、子供っぽさも持ち合わせていて今作のMVPは彼女に授けたいです。そしてやさぐれ運転手のマーティン、彼は物語が進んでいくごとにどんどん成長、というか頼れる兄貴分になっていきます。現実にあんな人がいたらもうイチコロですよ。
と、メインの登場人物だけでもお腹いっぱいなのに、すぐ喧嘩しちゃうグリムの両親、荒っぽい&キレやすい、その上近くを通った子供から小型自転車を奪い取るマーティンの兄、結婚式に間に合わない事に焦り、マーティンの車のフロントガラスに飛びついたり、クスリを飲んでハイになったり、ヘビメタを熱唱したりする花嫁、カラオケ大会で一見北斗の拳の世界線にいそうなのにめっちゃ気前のいいおじさんだったり、退職日に限ってめちゃくちゃ不幸に見舞われる警官と、背景の人物たちもこれでもかというくらいキャラ立ちしています。よって全員好きです!
バンドの大会に出場するため集まった親友同士の2人と9歳の少女、まさかの無免許ながらも運転手を買って出た青年のロードムービーというのもまた面白く、道中ドタバタトラブルに見舞われますが、ちゃんと理想と現実を分けて考えて前へ前へたまに後ろに戻りながらも前へと進んでいく姿がとても愛おしかったです。アクセルがとにかく後悔しているシーンが多いですが、彼が1番今作で成長しているなーと思いました。マーティンも一度捨てた夢を歌でまた切り開いていく姿もかっこよかったです。
物語の終わりも次への旅支度をするというのも自分好みの終わり方でした。
何故このような傑作が4年近く公開されず、その上小規模も小規模な公開規模なのかと思ってしまいました。もっともっとこの楽しい映画よ広まれ〜!
鑑賞日 2/13
鑑賞時間 13:35〜15:15
座席 E-9