劇場公開日 2022年9月16日

「これも犬、あれも犬、たぶん犬、きっと犬」ヘルドッグス ジュン一さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0これも犬、あれも犬、たぶん犬、きっと犬

2022年9月20日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

興奮

難しい

直近で「潜入捜査官」と言えば、
どうしても〔土竜の唄〕を思い出す。

原作がどうかは知らぬが、映画版は
『宮藤官九郎』脚本だけあり、
お馬鹿でお下品なギャグが満載の三部作。

とは言え、その中でも、所謂「兄弟」関係が
物語の主軸に据えられているのは、本作と同様。

この手の潜入モノを成立させるためには、
便利且つ重要なファクターなの?と
思ってしまう。

実際の出来事にインスパイアされたと思わしき、
新宿のスーパーマーケットで
何れもパートの主婦と女子高生数人が銃殺された事件。

動機も犯人も不明で、結局は迷宮入り。

が、その女子高生の一人と恋仲だった
所轄の警官『出月梧郎(岡田准一)』は職を辞し独自に捜索を開始し、
犯人集団を全て討ち果たし、復讐を遂げる。

そんな『出月』に目を付けた警視庁組織犯罪対策部の『阿内(酒向芳)』は
言葉巧みにリクルート、指定暴力団の「東鞘会系神津組」へと潜入させる。

タイトルの「ヘルドッグス」は
当該の組の最前線で汚れ仕事を一手に引き受ける部隊の俗称。

『兼高』と名前を変えた『出月』は
そこで弟分の『室岡(坂口健太郎)』とコンビを組み、
殺しをいとわぬ働きぶりでめきめきと頭角を現し、
組の上層部にまでのし上がる。

当初の目的は、上部組織を含めた情報の横流しも、
中途新たなミッションが。

それは、「東鞘会」のトップが秘匿すると言う、
警察の恥部を纏めた秘匿ファイルの強奪。

自身の素性を悟られぬまま、『兼高』は件のファイルを入手できるのか。

秘匿ファイルは物語の最後の最後に、ちらとだけ登場。
しかし、その内容を知った時に、確かにこれが世間に開陳されれば、
警察組織の面目は丸つぶれになるだろうと思える素晴らしい設定。

〔ジョーカー・ゲーム(2015年)〕の「ブラックノート」のように
得体のしれぬモノだったら笑ってやるぜ、と思っていたら、
豈図らんや納得の内容。

そして、そのファイルに書かれている中身こそが、
本ストーリーの底に揺蕩う暗部であり、貫くテーマでもある。

どのような志を持って「犬」となることを呑み込み、
自らを省みずに危険に身を投じるのか。

その意志が弱ければ、魅入られ、木乃伊取りが木乃伊になる可能性も否定はできず。

とりわけ個人の才覚で権力を手にする機会が回って来れば、
それに抗うことは、常人であれば困難だろう。

とは言え、本作で描かれている通りに
「犬」が至る所に跋扈している状態は、やや不自然さも感じはする。

そして片方のテリトリーに居る分だけ、
反対側にも居ないとアンバランスなわけだが・・・・。

ジュン一