「岡田准一⇒『ファブル』的なハデなアクション物?深町秋生⇒『渇き』的なクレイジーな犯罪物?と思いきや、意外に洗練されたフィルムノワール。久し振りに演出の巧い日本の娯楽📽️を観た印象。」ヘルドッグス もーさんさんの映画レビュー(感想・評価)
岡田准一⇒『ファブル』的なハデなアクション物?深町秋生⇒『渇き』的なクレイジーな犯罪物?と思いきや、意外に洗練されたフィルムノワール。久し振りに演出の巧い日本の娯楽📽️を観た印象。
①白眉のシーンは処理場での派手な撃ち合いではなく、銀座のクラブでの新人ホステスに化けた女殺し屋の正体を暴いた後死闘に雪崩れ込むシーン。演出の流れが巧い。②フィルムノワールと言ってもアメリカものよりフランスものに近い感じを受けた。ヤクザ社会を舞台にはしているが、私たちが馴染んだ(馴染むなよ)ヤクザ映画やその中のヤクザ達とは趣が異なりギャング映画のような撮り方。だからフィルムノワールの匂いがするのかもしれない。銀座のクラブや表家業の会社のオフィスのセットなど明らかに普通のヤクザ映画で描かれるものとは違う。岡田准一や坂口健太郎の家もスタイリッシュなインテリアにしてありヤクザの匂いがしない。組長の住む日本家屋がかろうじて従来のヤクザものらしい感じ。③俳優陣も北村一輝が唯一馴染みのあるヤクザらしい雰囲気(しかし北村一輝って紋紋を背負うのが似合うよねえ)を漂わせているくらいで、MIYABIや金田哲、吉原光のような所謂ヤクザ顔でない役者を選んでいるのもそういう雰囲気に一役買っている。④潜入捜査であることがいつばれるかというサスペンスもあまりない。大竹しのぶの“あんたは99.999...%ばれないよ”という台詞に妙に説得力があってバレないんだと安心してしまったし、三神が兼高の正体に気付いたのに全く別の流れで室岡に殺されてしまうところからも、兼高の正体がいつ組織にバレるかというサスペンスを狙ったものではなく、室岡が兼高の正体を知った時に“さあ、どうするか”という方を狙ってるんだなと分かった。⑤ほぼ潜入捜査が成功して会長・組長たち三人を始末しに行く事になってからなんとなく「必殺仕事人」の感じになって来て、特に河内が典子に“八年間待たせたな”と言ったところは「必殺仕事人」のテーマを流して欲しかったくらい。勿論そうすると別の映画になってしまうので、典子が組長の屋敷に乗り込み十字架に仕込んだ細い剣で緒形拳みたいに組長の延髄を刺すところまでは頭の中で「必殺仕事人」のテーマが流れていました。⑥ヤクザ物は所詮縄張り争いや抗争ぐらいしか題材がないので、途中で筋を追うのはやめて原田監督がこの裏社会ものをどう撮るかの方に興味の舵を切りました。⑦ラスト、兼高が迷いもせず室岡を射殺したところも、日本的な湿ったヤクザ物ではなく、乾いたハードボイルドかフィルムノワールだったと再認識した次第。