劇場公開日 2022年9月16日

「登場人物の相関関係の複雑さ、セリフの聞き取りづらさも難点です。特に裏切りが絡み合う終盤は、筋立てが複雑になる。ついていくのは、少々大変でした。」ヘルドッグス 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0登場人物の相関関係の複雑さ、セリフの聞き取りづらさも難点です。特に裏切りが絡み合う終盤は、筋立てが複雑になる。ついていくのは、少々大変でした。

2022年9月18日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 主人公は警官崩れの出月(岡田准一)。愛する人の復讐のため殺人に手を染めた彼は、警視庁の特別捜査隊にとらわれます。その獰猛さに特別捜査隊は目をつけ、兼高と名前を変えられた彼は関東最大のヤクザ組織へ潜入させられるハメに。任務は、組織の若きトップ・十朱(MIYAVI)が持つ“秘密ファイル”の奪取。警察の調査で相性が最も高いサイコパスの室岡(坂口健太郎)との接触を手始めに、着実に、かつ猛スピードで組織を上り詰め、敵対組織との戦いを経て、会長の信頼を得ていきます。そして続々と明かされる驚愕の真実。その先には誰も予想できない結末が待っていたのです。

 見どころは岡田が「技闘デザイン」も担当したという、数々のアクション場面。銃も使用するがまさに肉弾戦。肉や骨を打つ痛さを伝え、スタイリッシュな動きも追求しています。相棒役の坂口健太郎と共に、動きが実戦的でクール。
 シネフィルの原田監督らしく古今のアクション映画を参照しつつ、とにかく速い、キレがいい‼かつ重さと質感も忘れず曲芸的見せ物にとどまりません。
 潜入捜査官ものの定番「バレるかも」危機と「ミイラ取りがミイラ」展開も存分に織り交ぜて見せてくれました。
 異質なのは兼高の、身内に示す人間味と、スポーツ感覚で敵を殺す非情さのギャップ。徹底したプロ意識なのか怪物的本性なのか、不気味な影が濃く漂います。殺人をためらわない主人公の行動には嫌悪感も覚えました。この辺に好き嫌いが分かれそうです。但し、生き残るために必死なピリピリした感覚を、岡田が全身から醸し出すています。もはや貫禄たっぷりの顔つきです。俳優陣のアクの強いなりきりぶり、全場面が入念に設計された画作りとアクションなど、ノワールな映画濃度はかなり高いと思います。
 その半面、主人公が復讐する動機の弱さ、潜入捜査の目的の曖昧さがスリルをそいでいます。登場人物の相関関係の複雑さ、セリフの聞き取りづらさも難点です。特に裏切りが絡み合う終盤は、筋立てが複雑になる。ついていくのは、少々大変でした。

 次々に起こる新たなミッション、残酷なほどに純粋な、息つく間もない怒涛の2時間18分!この秋「ヘルドッグス」が日本映画に牙をむく!

流山の小地蔵