「バイオレンス・任侠・アクション」ヘルドッグス bunmei21さんの映画レビュー(感想・評価)
バイオレンス・任侠・アクション
岡田准一と原田眞人監督が、これまでの時代劇から、ヤクザの世界を舞台にして、3度目のタッグを組んだバイオレンス・アクション。刀から拳銃に持ち換えて、血しぶき飛び散る激しいアクションは、岡田自身が演出しただけあり、彼自身の良さを存分に映し出している。
警官だった時に大切な人が殺され、自分の非力さに絶望しながらも、その復讐を果たすことだけに生きてきた兼高。その凶暴さから、警察の潜入捜査官としてヤクザの組員となることを強いられる。そして、警察内部の極秘資料を持つ、ヤクザ組織のトップ・十朱から、それを奪う命を受ける。
十朱からの信頼を勝ち得る為に、組織のサイコパスな若きヤクザ・室岡とバディを組んで、立ちはだかるヤクザを次々に蹴散らし、時に命をはって十朱を守ることで、組織のトップに伸し上がっていく。そして、とうとう十朱の秘書を任されるのだが、そこで潜入捜査官としての素性がほころび始める。
主演の岡田准一のアクションはもう一級品。小さな体ながら、スタント無しで、自分自身で演じる姿は、日本のトム・クルーズ。英語を学んで、真田広之の後を継いで、ハリウッドに進出して欲しい俳優だ。そして今回、岡田のバディー役となった坂口健太郎も、これまでの優しく、草食系的な役柄を払拭し、狂気を内に秘めたサイコパスなヤクザを演じている。そんな彼の新たな魅力を引き出したのも、岡田なのだろうと思う。
実は昨日『沈黙のパレード』も劇場鑑賞したのだが、北村一輝、酒向芳、村上淳の3人の役者が被って出演していた。面白いのが、一方は刑事だったのが、本作では体中に入れ墨したヤクザ、一方はうだつの上がらない被害者のオヤジだったのが、闇を相手にする警察幹部と全く正反対の役柄を演じていた。しかし、どちらもその役柄に、違和感を感じさせない演技をしていたのは、流石である。
また、ヤクザのトップ・十朱役をギタリストのMIYAVIが演じていたが、ヤクザのトップらしい堂々とした凄味と立ち居振る舞いは、なかなかの演技力だと感心した。女優陣としては、松岡美優や大竹しのぶが、こちらもヤクザを相手にする肝の据わった女を演じている。
同じく岡田主演の『ファブル』とは、ひと味もふた味も違い、おふざけは一切なし。終始、痛く、苦しく、不穏な空気観が漂うシリアスな内容が続く作品。やや、抗争している組織の関係性が、説明的になっており、全てを理解するには難しく、そこが今ひとつ入り込めなかったが、現代的な任侠作品と言えるだろう。