「チェリまほじゃなくなった」チェリまほ THE MOVIE 30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい くまさんの映画レビュー(感想・評価)
チェリまほじゃなくなった
※Twitterや他サイトでも感想を掲載しているので、読んだことがある方がいるかもしれませんが悪しからず。
ドラマからの大ファンで続編は心待ちにしてましたが、私としてはこれはチェリまほじゃなかった。
ドラマと全然違う方向に振り切ったな、と。
ドラマでは同性愛をあまり問題視せずに、心が読めるというファンタジー要素はあるものの「ただそこにある不器用な恋愛」として楽しませてもらいました。同性愛だからと暗くならず、コミカルで笑いあり、キュンあり、切なさもあり、テンポも良く(1話30分が体感5秒もない感覚)そういうところが気に入ってました。
予告もドラマ同様コミカルに仕上がってたので、そのテンションで観に行ってしまったのがいけなかったのでしょう。コレジャナイ感が強かった…。
映画は一気に同性愛啓発映画になってました。安達と黒沢の恋愛を見に行ったはずなのに、その要素は薄くて「同性愛はこんな問題があります」「同性愛を認めよう」「自分らしい生きた方」みたいなメッセージが前のめり状態。この映画で同性愛について考える機会となれば良いとは思いますが、そこに重点を置いてほしくなかったのが正直なところ。映画になって扱うテーマを変えてきたのは仕方ないことかもしれませんが、ドラマのノリで今回のテーマを落とし込むことができなかったのか?ドラマで見てきた有能製作陣ならできたと思うのですが、あれ?製作陣変わった?くらいな路線変更です。
後半はドラマの心地良いテンポも笑いもキュンもなく、チェリまほの良いところを全て殺してしまった状態で、緩急やアップダウンもなく、ただ淡々と進んでいくだけでチェリまほで初めて退屈を感じました。あんなにハマって繰り返し繰り返し見直したドラマは初めてだったのに、退屈を感じて、私はチェリまほの愛が足りないのかなと自己嫌悪になるし、本当にショックでした。
見れば見るほど良いなんて口コミ多いですが、私は全集中でのめり込んで見るタイプなので、多くて3回見ればいいかな。それ以降はたぶん寝落ちしてしまいます。
赤楚くん、町田くんともに役に戻れてるか不安だったとおっしゃってますが、これだけテイストを変えられたらそりゃ戸惑うわ。
1番の原因は予算不足と尺不足だと思います。
原作も読んでますが、104分の中で扱いたいテーマにつながるところだけ取って繋げたという感じで、各エピソードがぺらっぺらのペラい。2週間で撮影したと聞いて、納得できるほどのペラさです。ドラマからは信じられないくらいペラい。
遠距離恋愛で2人愛が深まる→未来を考えるようになる→周囲へのカミングアウトという流れですが、8か月の遠距離が実質2週間の出来事しかやってないので2人の恋から愛の昇華を裏付けるエピソードがいかんせん足りないし、安達の葛藤や覚悟だったり、黒沢の弱さを認める強さみたいな心理過程や描写が荒削り状態で全然感情移入できなかったです。原作を読んで本当はこういうことがあったんだと補完する感覚でした。
よくよく考えると、クリスマスイブの裏話、年越し、転勤(2週間の出来事だけ)、10月11月(カミングアウトのところだけ)って一年のことを104分って、かなり駆け足。無理があったと思います。
相変わらず、手繋ぎやハグはあるものの、それ以外のラブシーンは全カットなので「一歩進んだ2人」を感じることができなかったのも原因のひとつかと。作品自体「30歳まで童貞〜」なのだから、初体験は物語の1番なターニングポイントじゃないのですか?そこすっ飛ばしてたのはかなり驚きでした。露骨でバッチバチな濡場まで望んでませんが、蔑ろにしていいものではなかったんじゃないかと。ラブシーンをカットしたことでいつまでも2人の恋愛が幼稚で綺麗事なままなので、2人の愛が中途半端だなぁと思いました。
おそらく、今回は後半のカミングアウトに重きを置きたかったのでしょうが、その導入に失敗してしてるので、私からしたらただの御涙頂戴展開に引いてしまいました。
結婚式も、安達の夢なのか?現実なのか?わからないままだし、結婚式までの過程もまた大変だったはずなのに一切なくて、結婚式入れとけばファンが喜ぶだろみたいな安易な考えがチラついてしまって心の底から祝福することができませんでした。
欲張らずに今回は遠距離恋愛〜同棲までにして、ドラマ同様、ゆっくりじっくり展開にしてくれたらまた違った意見になっていたと思いますが、今回の映画は私としては受け入れられない部分が多くて残念でした。
願わくば、ドラマやSPでもいいのでやり直してほしいくらいです。悔しい気持ちでいっぱいです。