「ノンストップ系ではなく密室系社会派ドラマ」ドント・ストップ つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
ノンストップ系ではなく密室系社会派ドラマ
タイトルも「ドントストップ」だしキアヌ・リーヴス主演の「スピード」のようなノンストップアクションサスペンスを想像するけど、全然そんなんじゃなかった。
どちらかというと救急車という閉ざされた空間に閉じ込められた密室系で、しかもミステリー的だったかと思う。
観ているコッチは全貌が見えているのでそうは思わないかもしれないが、警察視点では細部が見えにくい謎解きだったのは間違いない。
内容も割と社会派で、頭カラッポで観られるアクションかサスペンスを期待していた人には面白くないかもしれないが、地味な攻防の続くなかなか面白い作品だった。
少年がテロリストとなってしまった場合、彼らに爆弾など用意できる可能性は低く、当然彼らをそそのかした黒幕がいると考える。その筆頭はもちろん両親だ。なにせ一番身近にいるのだから。
その取り調べに対して完全に疑っているわけでも被害者かのように同情するわけでもなく絶妙な距離感で接しているところがいい。
救急車に少年が乗っていると分かったあとも、隊員の一人は移民、一人は夫がイスラム教徒かもしれないと調べ上げ、テロリストの少年の仲間である可能性を消さない。
映画的に極端に振らずリアリティのある接し方に、単なる娯楽作品にする気ではない気概を感じた。つまり、ミステリーサスペンス的なストーリーテリングなのにしっかりとした社会派ドラマの面白さが内包されているのだ。
あとは、登場人物の心情、感情を読み取れないと面白くないかもなと思う。テレビアニメのように全部言葉で教えてくれるわけではないので、ちゃんと見て自分で理解しなければならない。
例えば作品冒頭で、学校で爆破テロがありました現場に急行してくださいと連絡が入り、二人の救急隊員は「ゴクリ」となる。今さっき爆発した、まだ安全を確保しきれていない現場に行くことは自分の命が危険かもしれないということだ。だから「ゴクリ」となる。
危険かもしれない現場を離れ内心ホッとしていたら危険は自分たちの車の中にありました。だから面白い。
読み取らなければならない心情、感情は、救急隊員の二人、少年、少年の父、捜査指揮している人、と5人もいる。ただタバコ吸ってるだけじゃないんだよね。
何を疑い何を信じて何を助けたいのか、助けたい人は誰なのか。各自が「答え」を見定める、そんなドラマだ。