劇場公開日 2022年3月12日

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「喪失と再生の物語」スターフィッシュ レントさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5喪失と再生の物語

2024年3月5日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

怖い

知的

難しい

恋人を裏切り、病床の親友を放っておいた罪悪感を抱えた主人公オーブリー。親友グレイスの葬儀の後に彼女の家に潜り込み一夜を過ごすと外の世界は一変していた。

町からは人々の姿が消え、恐ろしい餓鬼のような怪物が徘徊する世界に。もとの世界を取り戻すにはグレイスのミックステープを全てそろえることが必要だと知った彼女は一人冒険の旅に出る。

本作を見て「ミスト」と「ジェイコブズラダー」を思い出した。あの巨大生物はアングルからしてどう見ても「ミスト」だし、餓鬼が徘徊する世界は煉獄をイメージした「ジェイコブズラダー」の世界だと思った。恐らく罪悪感から現実逃避をしたオーブリーが作り出した世界なのでは。

かけがえのない親友をなくした悲しみ、病床の親友を見舞わなかった罪悪感、恋人を裏切った罪悪感、死への誘惑に駆られた彼女を餓鬼たちが地獄へ引きずり込もうとする。思えば最初の葬儀のシーンで彼女の飲み物にハエが浮かんでいたのも悪魔ベルゼバブをイメージしたものだったのかな。
死の誘惑にとらわれる彼女、しかしトランシーバーから聞こえる「君は生きたいんだね」の声に導かれ、彼女は迷いながらもミックステープを探す。すべてのテープをそろえたとき餓鬼は彼女の前から立ち去った。彼女の生きたいという意思が勝った瞬間だった。
すべてがそろったテープには「許して忘れよう」の文字が。自らの過ちを受け入れて彼女は新たな世界に一歩を踏み出す。

主人公が死の誘惑に打ち勝ちいかに再生してゆくかを描いた物語。実話に基づくということからもしかするとこれは監督の実体験を基にした作品なのかな。

ホラー要素やアニメーション、音楽と、エンタメ作品としても飽きさせないつくり。
冒頭から弦楽器による音楽で魅了される。音に特化した作品だなと思ってたら監督はミュージシャンの方だという。ただ、全体的に静かな作品なのに時たまジャンプスケアで驚かす意地の悪さも。

レント