「宿命を糧にした一流バンカー」アキラとあきら movie mammaさんの映画レビュー(感想・評価)
宿命を糧にした一流バンカー
兄弟愛のような同期愛。
どんなバンカーになりたいのか?
同じ東大卒の優秀な同期同士でも、2人の理想は違う。
山崎瑛は救済できるバンカーでありたい。
父が社員5人の会社を経営していて融資を受けられず倒産した時、カトリック教徒のヤスさんが「越えられない宿命はない」と励ましてくれた。プレス会社では技術あるベアリングも作っていたが融資されなかったので、父は従兄弟の会社に入れて貰っていたが、そこに熱心に試算や再建策を考えてくれる銀行員が出入りしていて、銀行員の印象が変わった。
階堂彬は恩情を挟まないバンカーでありたい。
父は老舗大企業東海郵船を継いでおり、父の兄弟は関連会社を継がされており、兄弟仲が悪くいざこざを見て育った。親族間のいざこざはもうたくさんだと思い銀行員になった。
本社の部長不動は、確実性のみを見るバンカー。
若手にとっては融資先の将来性を無視しているように見えるが、国民のお金を信用で預かり積み上げた大金をどこに融資するかは、確実性がなければ信用を失うという考え方。
見る者にとっては、全て兼ね備えたバンカーに出会いたいし、兼ね備えた者が一流バンカーなのだろう。
山崎は担当先が新規受注もできたにも関わらず取引先倒産で不渡りをくらい、融資の稟議が通らないばかりか、担当先社長の娘がアメリカで手術を受ける預金も差し押さえられると知り、事前に社長が回避できるよう伝えたせいで、福山に左遷されている。やる気のない社員に囲まれ腐りそうだったが、社長から娘の手術がアメリカでできたし、ボランティア支援団体で出会ったかつてのヤスさんが牧師さんになっていてアキちゃんは昔からまっすぐだったと話していたと告げられる。そうか救済路線で良いのだと、左遷の試練を乗り越え本社に戻ってくる。
順調に本社で社歴を積む階堂は父が亡くなり、弟が実家の東海郵船社長となるが、伯父たちに騙されて巨額の関連会社との連帯保証を組んでしまっていた。
このままでは東海郵船本体も傾く窮地に、銀行を辞めて実家を再建する決断をする。そこで、山崎は選出されていたベンチャー支援プログラムを断ってまで、東海郵船の担当についてくれる。
もともと坊ちゃん育ちで尊大な物言いをする彬は山崎に対しても、見ていても、そこはお願いしますでしょ!ありがとうでしょ!と言いたくなるほど上から目線だが、瑛が本心を理解してくれて、再建案に協力してくれる。
横浜流星ファンとして見るが、竹内涼真の役がとても良い。
コンゲーム系が好きな私にとって、2人が最後に導き出した東海郵船と関連会社救済策はとても面白かった。
下田リゾートが借金チャラのまま物理的に残っちゃうけど人入らないのにどうするの?問題がかなり気になるがそこは伏線の山村紅葉オペレーション得意企業に渡すのかな?
父と叔父達は長男として融通される父の態度も昔から横柄だったようだが、彬と弟はお母様何してたのと思うほど2人とも態度が悪い。
でも、山崎瑛のおかげで、彬は叔父達も弟も和解をし、再び東海郵船に関連会社をグループ企業としてまとめる決断をする。大して利益の出てない東海商会は売却。
50億の連帯返済で窮地だった東海郵船に、90億貸して、返済できるのだろうか?と思うが、東海商会を販路ごと大麦酒造に売るかわりに、大麦酒造の輸送は東海郵船で独占するため今後新繊維で増えていく大麦酒造の輸送料が新たな収益の柱に成長するらしい。今は年間数億。。
でも、誰も救済できないかに思われた大企業のピンチの救済案を練り上げて頭取まで稟議を通せた瑛にとっても、これは宿命を糧にした意味のありすぎる案件だったのだろう。
同じくらい賢い同士の議論はお互い楽しいだろうし、2人は仲良しと言うよりも、そのように議論できる相手を大切にしたいので、離れていようと存在そのものが自分も頑張る支えになる、大切な人なのだろう。
短時間にまとまっているがテンポ良くとても面白かった。