「なんとも爽やかで気持ちいい物語」アキラとあきら R41さんの映画レビュー(感想・評価)
なんとも爽やかで気持ちいい物語
この作品は、弁護士作品でも見られるのと同じく、本来銀行員ができないし関わらないことを「物語として関わる」ことで面白いフィクションに仕上げている。
その根底にあるのが「晴れの日に傘を押し付け、雨が降れば取り上げようとする」という慣用句的な言い方をされる銀行に対する「一縷の望み」を描いていると感じた。
作品では銀行員とは一体何かということについて、各々の行員の考え方を美しくまた、もっともらしく描いている。
同時に、「乗り越えられない宿命なんてない」と、人生における様々な出来事は「偶然ではなく」「自分の人生は自分で決める」ことで道が開かれていく真理を説いている。
一見真逆の環境で育ったアキラとあきら。
しかしその根底にあるのは、自分に正直に生きること。自分に嘘をつかない生き方をすること。そんな風に読み取った。
ヤマザキアキラがピンチの時にカイトウアキラが素晴らしいアドバイスを与え、カイトウアキラがピンチの時にはヤマザキアキラが全力で応援する。
お互いライバルであるかのようで、真逆であるかのようだが、その起きた事象の中で何が一番大事なのかを二人とも理解している。
そこに損得勘定はないのがこの作品を爽やかで心地いものにしている。
二人の出会いが、その当時出会った記憶が、灯台の傍で思い出されひとつになる。
初めから決まっていた宿命。すべては偶然じゃなかった。
しかしそれは決して「結果がわかっているゲームほどつまらないものはない」のではなく、起きた出来事から自分自身の想いがどこにあるのかを見極め、全力で自分が正しいと思った意志に従う。
人として、これが本当の生き方だろう。
作品は美談だ。でもいま、そういうのが求められているんだなと感じた。
斜に構えて見れば少し前のドラマに感じてしまうが、銀行員としてあるべき姿をこの作品は伝えている。
黒澤明監督の「生きる」は、「役人仕事」と揶揄された役人にもできることがあると伝えていたが、この作品はまさにその銀行版だろう。
いま銀行員の中にヤマザキアキラのような人物はどれくらいいるのだろう?
絶体絶命の東海郵船グループ。銀行をやめてその舵取りをすることに決めたカイトウアキラ。
問題のイーストオーシャンホテル。そして東海商会と東海郵船。親族間のしがらみ。
単独では無視されたイーストオーシャンの売却も、東海商会とのセット販売を考え付くがあまりにもリスキーなため断られる。
そうして出た妙案は、順風満帆な東海郵船に140億の融資をし、全株を東海郵船に集める。
三友銀行からの融資をすべて返済して、日本麦酒に東海商会を50億で買い取ってもらう。
その50億を返済。実質90億の融資は、東海郵船グループが返済可能な額となる。
作家はこの構図を先に発案し、この物語が紡ぎだされた。ドラマにするための頭取のかつての思い出と、研修に使われたゲーム。
二人の当時の出会いと、ヤマザキアキラの父の工場で働いていたドランクドラゴンが神父だったという設定。
一途さと違法の紙一重。
このような思いを行動にしなければ物語にはならないのかもしれないが、銀行のあるべき姿を説いている。
特に、資料と数字だけで右から左へと裁かれている零細企業。
作中最後にはいい意味で使われていた「確実性」
確実性などこの世界のどこにも存在しないと思うが、自分の生きざまを貫く「アキラとあきら」に、日本人の底力を感じた。
良い作品だと思う。
こんばんは♪共感コメントありがとうございます😊
貸す根拠→確実性の度合い、
を見極めていく仕事。冷徹な部分もあるかと思いますが、
人の為に貸す銀行、あって欲しいですね。余談ですが、TV版もお薦めです。機会がございましたら、
是非どうぞ🎀
R41さん、共感&コメントありがとうございます!
実は俺も原作やドラマは読まない見ない主義だったのですが、近年ドラマを見ないとわからない映画が多すぎるため、最近Tverなどサブスクにあるものはなるべくドラマを見ています。
おかげで映画鑑賞本数がかなり減ってしまいましたw
コメント・共感いつもありがとうございます。
「育ちがいいな」
たしかに映像の中で、子役のカイドウが子役のヤマザキに言うシーンが
あると実感として良かったですねー。同感です。
R 41さんが、「生きる」と比較して、
お役所仕事にも銀行員にも理想を追うことは可能・・・と
書かれているところ、いいなぁと思いました。
ただ銀行員は個人的にお付き合いはないのですが、
金融関係の仕事は、悪魔に魂を売らないと出来ない仕事だなあ・・・
と、思っています。