「兄より優れた弟など存在しない」アキラとあきら よっちゃんイカさんの映画レビュー(感想・評価)
兄より優れた弟など存在しない
タイトルのセリフを地でいくストーリーでした()
という冗談は置いといて。
三木監督の勢いが凄まじい。
いや、前々から大ヒット作を連発している有名監督であることは無論知っているが、この1ヶ月程度で三作も監督作品が公開されて、しかもその三作全てが一定のクオリティが維持されていて三作全てジャンルが違うという。
もはや狂気の沙汰である()
原作未読。
最初の展開はいかにも池井戸作品らしい・・というか半沢直樹みたいな展開。
色々主人公たちに理不尽な困難が降りかかり、順調そうに見える階堂にも色々不穏な種は撒かれている。
瑛の必死の稟議書を「確実性がない」の一言で通さない上司。
龍馬から社長職を引き継いだ彬に対して自分達のことを棚に上げて挑発する叔父たち。
もうこの時点で「あぁ今回はこの2組が最後に土下座するのね」なんて思ってた。
するとどうだろう。
彬は叔父たちに逆に土下座をして「もう一度一族みんなで繋がろう」とお願いをして、瑛の上司は最終的に稟議を通す・・・
「いや、土下座は!?」
ここでかなり面食らった。
しかし、この半沢直樹を一種振りにしたこの展開にしてやられた。
土下座がなくても爽快感って味わえるんですね。
本当この作品後半になって尻上がり的に良くなってくるし、考えれば考えるほど味がしてくる。
例えば最後上司が確実性があるという理由で稟議を通すことで、前半担当した工場を救えなかったのは銀行の腐敗や理不尽などではなく単純に瑛の実力不足であったというのがわかるので「半沢直樹」的な「勧善懲悪」っぽさが消えて物語としての深みがより一層増した。
もちろん、半沢直樹みたいな勧善懲悪の物語も大好きなのだが。
もう少し前半が深ければと思わなくもないが、映画の尺を考えると致し方なしか。
むしろ、尺が無い中でこれほどまでにきっちりとまとめ上げて、(おそらく)原作の勘所を外すことなく実写化した三木監督以下スタッフ陣すげぇぇぇぇとなる。
演技の上ではやはり皆さん粒揃いで特に横浜流星さんと竹内涼真さんの対比はかなり効いていた。
みなさんとても輝いていたのだが、中で1人あげるとすれば高橋海人さんだろうか。
今放送中の「純愛ディソナンス」のあの人と同一人物とは思えないほどの傍若無人っぷりで、兄に対してコンプレックスを抱いて薄々叔父たちの悪巧みに勘づきながらも泥舟に片足を突っ込んで追い詰められていく姿がリアルだった。
兄との邂逅のシーンの演技がもう少しよければ上々吉。
上白石萌歌さんがどうしても社会人に見えなくて困ってしまった()。これは当人の演技どうこうという問題じゃなくてイメージの問題なんですけど。
あと、やたら聞き馴染みあっていい声の社長役の人がいるなと思ったら山寺宏一さんでびっくりした。
そして突然の山村紅葉さんに思わず笑ってしまった。
【追記】
あと、本作は経済映画に見せかけた家族映画?です。
というか、池井戸さんの作品自体、経済物に何かひとつ我々でも共感できる要素をプラスしている印象。
今回はそれが家族愛であっただけだろう。
バラバラに離れた同族会社が再び手を取り合うところとか船の例えもあったので「真田丸」を思い出してしまった。
まぁ三谷脚本の大河ドラマ最新作「鎌倉殿の13人」は目的を果たした集団が内ゲバをする様子を描いているのですが()
閑話休題
こんな感じで小難しくて万人受けでない経済の話をうまいことわかりやすく消化して小説にする池井戸さんもすごいと思うし、それを完璧に実写化する俳優さんやスタッフ陣も素晴らしいと思った。