劇場公開日 2022年8月26日

「アキラとあきらを見て感じたこと」アキラとあきら コショワイさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5アキラとあきらを見て感じたこと

2022年8月30日
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鑑賞方法:映画館

1 池井戸お得意の銀行モノにして、境遇を異にする二人の銀行員の運命的な関係を描く。

2 この映画は、二人の銀行員・竹内涼真と横浜流星の関係性を縦軸に、横浜流星一族の内輪もめを起因とする会社の危機の行く末を横軸としている。主人公に立ちはだかる巨悪との対立構造や時間的制約の中での無理難題の解決といった筋立てのキモがないため、全体的に小粒ですかっとしない。

3 竹内は、過去の自分の体験から雨降りの時は傘を差し出す銀行員を目指すのに対し、横浜は情に流されてはいけないと言う。竹内の人物造形は、エピソードを積み重ねており説得力がある。中でも左遷される原因となった顧客の対応は血が通っていた。これに対し、横浜側の人物造形は、総じて薄っぺらい。裕福な一族の中で、横浜の冷徹な性格や仕事振り、弟とのぎくしゃくした関係、親と対立する伯父たちの関係が形成されたエピソードはほとんど語られていない。また、横浜一族の同族によるグループ会社は名門とあるが、流星と父以外は人物像からして衝動的で経営者の器ではなく、リアリティに掛ける。経済的危機にしても会社内の人物が描ききれていないため切迫感がない。シナリオが弱い。

4 竹内は、邪気のない目を持つひたむきな銀行員を好演し感情移入できた。横浜は、ダブル主演ではあるが、竹内の落としたものを拾うだけの引き立て役となった。細く眉を整えた銀行員はいないだろう。奥田と江口の銀行員は、かくあるべしとのセリフもあり存在感を示した。最後に、竹内が銀行員を目指す切っ掛けとなった名もなき銀行員のその後の姿を見せてほしいとは思った。

コショワイ