「俺たちは、監督の頭の中にあるものを形にするためにここに来ている!」ハケンアニメ! kazzさんの映画レビュー(感想・評価)
俺たちは、監督の頭の中にあるものを形にするためにここに来ている!
“派遣”かと思ったら“覇権”だった…😅
良くできたお仕事ムービーだと思う。
アニメが日本のメインカルチャーとなって久しいが、制作の舞台裏はまだまだ一般に認知されてはいない。
そんなアニメ制作現場を簡潔に紹介している。大まかな工程や分業体制の概要をスピーディーに示したうえで、具体的な作業を象徴的に見せていて、リアリティーとファンタジーのバランスが上手い。
よくあるお仕事ムービーは、素人上がりの主人公と一緒に観客もその仕事を知っていくのが常套。だが、この映画の主人公は新人監督とはいえアニメ制作には精通しているのだから、説明は観客に対してのみ必要になる。そこがくどくならないように巧みに雰囲気を伝えている。
そして、その現場はクリエイターたちの戦場だった。
彼らは技術的には絶対的な自信を持つ一騎当千のプロフェッショナルたち。それぞれの役割分担の中で、降ってくる要求に最高位の品質で応えるべく日夜苦闘しているのだ。
ただ、これを見てブラックな職場だと感じる人がいたなら、残念だと思う。
公務員を退職してアニメーション制作会社に入社し、下積みを経て初めてテレビシリーズの監督に抜擢された斎藤瞳を吉岡里帆が演じる。
彼女をアニメの世界に転身させるほど影響を与えた天才監督 王子千晴を中村倫也が演じる。
こんなビジュアルのアニメ監督二人が並ぶなどあり得ないと思うが、この二人にラブストーリーが生まれないことも驚きで、あくまでもお仕事ムービーなのだ。
王子はイケメン天才監督と言われながらブランクがあったようで、復帰作が注目を集めている。浮世離れした芸術家肌の男だが、本人は天才という評価と葛藤している。
瞳は、王子を越える作品を作りたいと、業界に身を転じた。“ちょっと可愛い”がマスコミ受けして、監督デビューが注目されている。自身は巨星に真っ向挑む熱血娘だ。
土曜日夕方の同時刻枠の裏番組として二人のアニメが直接対決するという、スポ根的な物語構成が面白い。
二人をそれぞれのプロデューサーが支える関係性も、ボクシング漫画の選手とトレーナーに置き換えられはしないか。
瞳を抜擢したプロデューサー行城理(柄本佑)は、商売至上主義のドライな男に見えて、その裏では瞳の才能を評価していて、彼女に欠けるビジネス感覚を養わせるために策を弄する深謀遠慮の男。柄本の個性がピタリはまっている。
王子が行方を眩ませたため、自分が代行してでも作品のコンセプトを守ろうとする信念の女性プロデューサー有科香屋子(尾野真千子)は、元伝説の制作進行だった。王子とテレビ局幹部の狭間に立って闘っている。今や日本映画のキーパーソンの一人となった尾野真千子が、安心の説得力で難しい役どころを体現している。
さて、二人の作品の放送が始まると、試合開始である。
この決戦に注目する人々の様子はまるで試合の観衆のようだし、一進一退の戦況を示すアニメーションの合成はスコアボードのようで、スポ根路線を盛り上げていく。
駅のホームでSNSに躍起な高校生たちの話題がこのアニメ対決に集中するのは良いとしても、電車の乗客の誰も彼もがスマホでテレビアニメを観るはずはなく、やり過ぎな感じがなくはないが。
瞳には行城が、王子には香屋子が、付かず離れずのバックアップ体制で決戦に臨むのだが、女性である瞳と香屋子が情熱的な「動」で、男の王子と行城が掴みどころのない「静」という対比的なキャラクターになっている。
行き詰まった瞳がボクシングエクササイズのジムで偶然香屋子と会う。ここで初めて二人だけの深い会話になるのだが、そこで何かを掴むのは瞳ではなく香屋子なのだ。
瞳vs.王子の対決の物語と並行して、新人監督と現場上がりのプロデューサーという二人の女性が悪戦苦闘する様が描かれる。
そして最後に、男たち(行城と王子)が彼女らをどう見ていたかが語られるという、粋な構成だ。
劇中劇のアニメもなかなかに良く、観る価値のある映画だ。
原作は未読だが、章ごとに主人公が違っていて、香屋子ストーリー、瞳ストーリーといったオムニバス形式らしい。これも面白そうだ。
ここまで来たら、思い出しました。余談になりますが、
京アニメ事件、なんともやるせない事をしでかしてくれたなぁ、と思います。最近もニュース出ていました。若い入社したばかりの方のご両親が、我が子までなぜ犠牲にならねばならなかったのかと、
憤ってられていました。
踏みとどまることができなかったのかと思いました。
こんばんは♪
アニメ愛と車🚗愛溢れるコメントをしていただきましてありがとうございました😊
オタクを抜いて、
アニメ愛溢れるKazz さん、
と申し上げさせていただきます。
💕ディズニーの中でもやはりアニメが一番だと思っています。💕
しかし、この業界短命の方多く、
しんどいのでしょうね。
創造力は際限ないからでしょうね🦁
こんばんは♪共感していただきましてありがとうございました😊
Kazz さんのまた違った一面を見せていただきました。
アニメオタクですか❓
素晴らしいレビューからアニメ愛❤️が溢れ出ています。詳しくまた改めて観た気にさせてくださる
文章力❣️またまた尊敬です🦁
不躾に共感を押してしまいました。
K azzさんのレビューに素直に感動しました。
素晴らしいレビューですね。
はじめまして 琥珀糖です。ほんの新入りです。
よろしくお願いいたします。
(実績のある実力者の方にフォローするのも厚かましくて・・・
(気後れしています)
> 良くできたお仕事ムービーだと思う
そうっすよね!
原作も面白かったです。あ、ここをこんな風に変えてたんだ、とか、この人たちのエピソードは原作ではこんなに掘り下げられてたんだ、といったように、変えられたところも、削られたところも、全て楽しめました。映画から先に観た場合の利点でしょうか。
kazzさんへ
コメントありがとうございました!
久々に、ちゃんと刺さりました。基本「信念」のお話なんですが、重苦しさも押し付けがましさも無いストーリーが好みでもあったし、何より吉岡里帆w
コメントお邪魔します。
原作は確かにそれぞれの章で独立してるのですが、最後の章、王子の生まれ故郷でみんな集まってくるのです。
そういうことかー、という流れが上手いうえに、それぞれのこれからが読者一人ひとりの楽しみとして、想像力が膨らみます。文庫本600ページの分量がそのまま豊かな時間に置き換わります。
機会があれば是非❗️