「おみそれしました」ハケンアニメ! Scottさんの映画レビュー(感想・評価)
おみそれしました
原作は文句なく面白いんだよね。
それで舞台化されたから観に行ったら、これも面白かった。
映画化されるっていうから、絶対に観るって決めてたの。
吉岡里帆が有科香屋子役だと思い込んでたの。尾野真千子が演じた役ね。
原作は、四部構成だかで、各部で主人公が違うんだよね。でも共通して有科香屋子がいる感じで、ここを中心に描いていくのが楽なはずなの。
王子監督と一番絡んで対立するのも有科香屋子だしね。
そしたら、吉岡里帆は新人監督・斉藤瞳役だった。
「いや、王子と斎藤の二人で描くのはキツイだろ」と先行きに不安を感じたの。
不安といえば、オープニングもどうなんだろうという感じで。
七年前の斉藤瞳の面接から入るんだけど「なんだこれ?」と思ったな。
あと不安だったのは。原作も舞台も、そんなにアニメ作品を映さないんだよね。
だから、観客が自分の脳内に好きに「すごいアニメ」を再生させればいいの。
でも映画でやっちゃったら、ここは描かざるを得ない。
人気を博するアニメの片鱗を、呈示しないといけないの。
でも、不安は杞憂だったね。
ストーリーは停滞してたけど、王子と斉藤瞳の対談のシーンから盛り上がる。
それまでは主人公の片割れが不在だから、話が進まないのも当然だけど。
アニメも一部しか出してないけど、なんか納得のでき。
そして話が進んでいき、斉藤瞳が「やらなきゃ」ってなるところから、原作の熱さがそのまんま出てきた。
ラストは「かつての自分のような子供に作品を届けたい」っていう斎藤監督の望みが叶ったってことだけど、もう少しすんなり終われた気もする。
オープニングで不安を与えてしまう点とかもあったから、吉野監督の次回作は観てみて、癖なのかこの作品だけなのか確認してみたいと思ったよ。
小野花梨も良かったね。たぶん、王子・斎藤の対決を描くだけなら、なくても良いエピソードだと思うの。なんならキャスティングの関係で描かざるを得なかったんじゃないかっていう。
でも効いてた。そして、作品後半に向かうにつれてキレイになってくね。恋をしてるってことなんだけど。
声優役の高野麻里佳の「駄目な声優」演技もうまかった。
アニメを真剣に観ないから良く分からないんだけど、それでも「この声優のこの声の出し方はないわ」と思ったもん。当たり前だけどラストに向けてはキッチリ良くなる。
色々あるけど、元の作品の熱さが残るから、面白いよ。
劇中二作品も含めて作り上げる原作者・辻村深月がすごいな。