「「心の潤い」は無料で享受させて…」渇水 おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
「心の潤い」は無料で享受させて…
公開日はあいにくの悪天候でしたが、上映時間の都合がよかったので「怪物」に続けてハシゴ鑑賞してきました。
ストーリーは、水道料金滞納家庭を訪問しては料金徴収や停水執行をしていた水道局員・岩切俊作が、妻と息子に家を出ていかれて寂しい生活を送る中、仕事で訪れた家で、父親不在で母親にも育児放棄された小学生の姉妹と出会い、自身の中にある変化が起こるというもの。
水道料金を払えない側にも、やむにやまれぬ事情がある人が確かにいるのですが、それでもなお停水せざるを得ない水道局員。仕事とはいえ、やりきれない思いから少しずつ心を蝕まれていくように感じるのも無理からぬことでしょう。流されるままに生きてこの仕事に就き、それを粛々と進めてきた岩切も、今や妻と息子にも見放され、もはや心が麻痺しているかのようです。そんな彼の心を揺さぶるのが幼い姉妹の姿です。疎遠となっている息子の代わりにこの二人をなんとかしたいと感じたのかもしれません。それほど心が渇き、己の寂しさを何かで埋めたかったのかもしれません。ネグレクトの母親に思いをぶつけながらも、その資格のない自身の不甲斐なさを振り返っていたことでしょう。
一方で、逆境にもめげず、支え合って暮らす姉妹の姿に心を抉られます。姉は目に力のある子で、大人に頼らず妹を守りきる凛とした姿がなんとも切ないです。妹は屈託ないかわいらしい笑顔の裏で、実は姉しか頼れないことを本能的に察知しているかのような姿がこれまた切ないです。この二人もまた、誰にも頼れず、誰も信じられないほど、心が渇ききっていたのです。
終盤で、給水制限の中、岩切が公園の水道を全開にする行為は本当にささやかなテロですが、からからに渇いた心に潤いを与えてくれた姉妹への感謝のようにも思えます。そして、すべての大人や両親さえも敵視していた姉妹にとっても、この上ない心の潤いになったのだと思います。逆に、彼女の妊娠を知った木田は、このささやかなテロには加わりません。「守るものができた」というのは、木田の心の潤いを表している言葉だと思います。
本作を通して、家族のつながりがどれほど心を潤わせてくれるのかということを改めて感じた気がします。本作が、ネグレクトやヤングケアラーの問題に苦しむ子どもたちの救済の一助となることを切に願います。「心の潤い」だけは、誰もが無料で享受できるものであってほしいです。
主演は生田斗真さんで、流されるままの岩切を好演しています。脇を固めるのは、新たな一面を見せる門脇麦さん、ドラマや映画に引っ張りだこの磯村勇斗くん、安定の演技の尾野真千子さんらです。そしてなんといっても、子役の山崎七海さんと柚穂さんの演技が光ります。
余談ですが、劇中で岩切の自家用車のナンバーが「3274」なのは、「水なし」の語呂合わせなのでしょうかね?
ふ、震えました!!!感動しました!特に後半「家族のつながりがどれほど心を潤わせてくれるか」「心の潤いだけは誰もが無料で享受できる物であって欲しい」本当に、本当に共感の嵐です。以前ネグレクトについて読んだ記事に、ヤングケアラーと呼ばれている子の多くは自分の置かれている環境が特殊だと認識していないそうです。それがあまりにも「日常」だから。。当たり前の権利を奪われている事も知らないんですよね。私の周りにもヤングケアラーに該当する子がいますが、いつも頑張っていて健気で良い子なんですよね。全ての子供達の心が潤って希望ある未来がある事を知ってもらいたいです。偽善だ、理想だと言われてもそう思わずにいられません。いつも映画同等の感動をありがとうございます。