劇場公開日 2022年8月6日

「音楽映画として名作、ONE PIECE FILMとして異質、そして・・・バッドエンド作品」ONE PIECE FILM RED mokusin takataniさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5音楽映画として名作、ONE PIECE FILMとして異質、そして・・・バッドエンド作品

2022年8月20日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

ヒロインは歌姫、歌唱パートはADO担当、事前の情報の時点で音楽映画になりそうだと感じていた。ここでの音楽映画とはアナ雪とかのディズニー映画、あの唐突に歌い出すのが好きではないが、ONE PIECE FILMシリーズのクオリティからくる安心感もあり、それらを踏まえて鑑賞。

結果、割り切ったのもあるが、文字通り”別次元”であるADOの歌唱力と演出自体のハイクオリティな映像の数々に、好きじゃないジャンルながら凄いモノを見たと驚くしかなかった。とりわけ一発目の『新時代』はADO=うっせぇわの人程度の認識が吹き飛ばされた、70代の母親がADOの歌唱力を絶賛しアルバムを欲しがるわけを痛感した。また歌がストーリーに入り込む理由もしっかり説明されていたのは好印象。考えるな、感じろ精神で突然歌いだすのが通例で、それが嫌だったが、本作は『目的があって歌っている、手段も歌えば実現できるから全編通して歌いまくるのは必然』だと説明し、何故そこまで歌に固執するのかも劇中で描かれている。個人的には音楽映画としての完成度ならディズニーより好き。この様にウタに関する事は深く描写されている、それこそワンピースキャラの存在が添え物か話を進行する存在になる程に‐‐‐そう本作はウタが主人公。

しかるに、本作はウタが好きになれるかどうかで評価は真っ二つに分かれる。もしこれまでのを想定して観ると絶対がっかりする。重ねて言うが、ウタを主軸にしている為、麦わら海賊団から赤髪海賊団とキャラは沢山出るが、活躍は一律地味。前作も沢山のキャラを出しつつ印象も残るお祭り作品に対し、本作ではちょっと喋って技を繰り出したら早々に退場し、便利な能力持ちは話を進行させる舞台装置に変わる、そして一見するとお祭り作品に見えるが、その実本作はかなり重々しい内容だ、ウタは主人公だと繰り返したが、そう考えたうえで結末を考えると何て残酷な話だろうか、音楽映画としてなら良作だが、彼女の出生から辛いのに生涯の十数年間は罪の意識に苦しみ続け、その苦しみを生み出した元凶には再び狂わされ最後は・・・本作は実質“主人公がバッドエンドを迎える”といって差し支えない、とても辛すぎる。あと、シャンクスをあれだけ押し出していたのに、実際はなんの前触れもなく突然やってくるから盛り上がりに欠けるのが実に惜しい。冒頭でウタがライブをすると宣言している映像を見て、何かを感づいて動き出すとか、島に上陸する前に海軍を難なく退けながら『今行くぞウタ』とかとか・・・シャンクスをカッコよく見せる方法なら幾らでもあるだろうにホントに勿体ない。ONE PIECE FILM特有の原作とリンクする要素も殆ど無かった気が、せいぜいシャンクスがナミと同様みなしごでした位だろうか、そしてウタのフィガーランド家?とか言及されているが本編ではその意味は明るみにならない、原作で回収するのだろうか。?

終盤の赤髪と麦わらの両海賊団の共闘は、原作での制約がある中、良く実現させ、それでいてドラゴンボール並みに派手なアクションをしていた、だが全体を見るとアクション要素は従来に比べ物足りない。

総括すると、音楽映画とADO好きなら強くお勧めできるが、従来のONE PIECE FILM好きにはお勧めしがたい。

あと、主人公が不幸な最後を迎えるのが平気な人も。

木神