「理想のシャンクス像がある方は気を付けましょう。」ONE PIECE FILM RED むらくもさんの映画レビュー(感想・評価)
理想のシャンクス像がある方は気を付けましょう。
まず、シャンクスが良い人である前提で話します。
シャンクスがウタを捨てるシーン。
一見、国を滅ぼした事実を娘に背負わせないために自分が罪を被る素敵なシーンに見えるけど、詰めが甘いのが黒岩節。
パンフレットの黒岩さんのインタビューも見れば分かるが、ストーリーで一貫してシャンクスはウタに歌手になることを勧めています。黒岩さん自身も海賊の世界で酸いも甘いも知ってるシャンクスは、ウタの圧倒的な歌声で世の中に光を照らすことが出来ると考えたと語っています。
ここに違和感を感じるか感じないかで賛否両論が起こってるように思います。
これは、典型的な親のエゴ。美談として語るには難しい内容です。圧倒的な歌声よりも泣いてまで懇願する娘の願いを優先するべきではないか?
確かに最後の歌う姿を見守るシャンクスは涙なしには見れない作中最高の盛り上がりのシーンだが、過程に違和感を覚えたから、歌で反射的に涙を流しながらモヤモヤするという変な気分になりました。
黒岩さんの意図を汲むなら、20歳でウタを拾い7年間育てたけど、肉親じゃない&普通の家庭で生きてこなかったシャンクスだからこその答えを表現したかったんだろうけど、それでもウタは片思いし続けてきて、シャンクスに「ありがとうごめんなさい」を言えたから死を選ぶ姿はあまりにも不憫でシャンクスに負の感情しか湧きませんでした。最後も作品的に黙ってるのが正解だけど、謝罪をしろよと。親として言葉をかけろよと。
友だちを傷つける奴は許さないという割に、娘はそんな扱いなのかと自分の中でのシャンクスが少し壊れた気がします。
だからこそ、シャンクスが悪い人ならば、許せると感じた。
後、ウタの葛藤や喜怒哀楽などの心理描写が回想や歌と混ざりすぎて、読み取りずらいと思いました。
特に、ゴードンはシャンクスより長く育てた親なのに、その2人の間の心理描写やゴードン自体の掘り下げが弱かったのも残念です。この人は結局何者なんだ?って気分で映画が終わりました。
正直、この映画を最大限に理解し楽しむには40億巻は必須だと思います。
上のストーリー最大のキーポイント以外の歌と回想を織り交ぜた展開は巧妙で見応えがありました。
序盤の歌唱パートに酷評の人が多いですけど、ウタのセリフとして捉えられるべきだと思います。しっかりワードが指定されていて、内容に合わせて作られているので。
ラストの戦闘は評判通りかなと思います。
映画とはいえ、たった115分だからあまり深く考えずに観るのがベストだと思いますね。目と耳で十分楽しめると思います。
40億巻持ってませんが、同感です。2歳から9歳まで育てて、急に突き放すって親のやる事として厳しすぎますもん。そりゃウタもどこかしら性格歪みますよ。よって、私のシャンクス像も壊れました。
ルフィが山賊に攫われたあとに動揺しすぎて、「うろたえんじゃねえ!」ってツッコまれてたあの温かいシャンクスはもういない。今回の冷静過ぎるシャンクスには、むしろサイコ要素を感じました。