配信開始日 2022年9月8日

「オリジナリティが空回り」ピノキオ Spiさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0オリジナリティが空回り

2024年1月26日
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鑑賞方法:VOD

ディズニー映画ピノキオの実写版。
普通のアニメを実写化した作品とは意味合いが少し違うかもしれないが、アニメの実写化というとほとんどの場合原作にはないオリジナリティ要素を加えたことで原作の世界観を壊してしまう作品がやたら多い。
この制作者と視聴者の隔たりというのは散々レビュー等で叩かれているにもかかわらず今の時代になっても無駄に作られるのだが、今作のピノキオでも何故?となるオリジナリティがねじ込まれてしまっている。

一番目立つのはストロンボリの劇場で働かされてる少女ファビアナ。物語のジャマをしない形で登場するが、これが本当に物語のジャマになってないどころか必要性がない。例えばファビアナの言葉や行動がピノキオの内面をいい方向に変えてくれる等のアニメの展開のフォローという形で登場させたのであれば全然構わないのだが、これではなんで追加したの?と疑問しか出てこない。身体に障害がある子が独立して立派になるのとピノキオの物語になんの関係があるのか。他の作品でやってほしかった。

同じシーンでかごに捕らえられているピノキオが逃げ出すシーン。アニメではブルーフェアリーに助けてもらうのだが、その際に自己弁護のために嘘をついた事で鼻が伸びてしまうという罰を受けるのだ。ところが実写ではブルーフェアリーは登場せず嘘を付いて鼻が伸びたおかげで鍵を手に入れることができる。言い訳のために嘘をつけばピンチを切り抜けられるという教訓?どんな教訓だ。

今作のラスボスであるモンストロ。本来は大きなクジラであり強大な海と動物の前では人間と人形などちっぽけな存在。そんなクジラに食べられてしまったピノキオ達はどう窮地を脱するのか、というシーン。別にそのままで問題ないハズなのだが、今作ではなぜか触手の生えた文字通りモンスターになっている。だが、別に特殊な能力を使ってくるわけではない。普通のクジラでは迫力のあるシーンが撮れないと考えたのか。もしやシーシェパードに忖度してる?モンストロをデザインしたウォルフガング・ライザーマンに失礼だと思うのだが。

そしてラストの展開。アニメではゼペットを救うかわりに動かなくなってしまったピノキオは、それまでの功績を認められてブルーフェアリーに本当の人間にしてもらえるというもの。
実写ではゼペットの考え方が変わっていて、人間になって欲しいと願っていたが人形であってもピノキオのことを大切に思っている、人間かどうかなんて関係がなかったんだという事実に気付くのだ。
姿形や人間かどうかなんて関係がない愛!これだよ!差別を無くすというメッセージがごく自然な形で物語に落とし込まれている!ブルーフェアリーをファンキーな黒人にしたりとかじゃなくてこういうやり方を増やすべきだ!
と個人的にとても感銘を受けたのも束の間、去りゆくピノキオは人間へと姿を変えていく。
なんでだよ!結局人間になることこそが幸せなのかよ!感動のメッセージぶち壊しだよ!

と、イチャモンはとめどなく出てくるのだが実写のピノキオはアニメとはまた違った可愛さがあるし、子どもたちが好き勝手出来るプレジャーアイランドはまさに子どもが想像する楽しい遊園地を具現化していて目を奪われるし、アニメで表現されてもふーんとしか思えないような場面がCGで綺麗に表現されているのは一見の価値アリでした。

Spi