「故郷の出奔を余儀なくされた真の理由」ベルファスト talkieさんの映画レビュー(感想・評価)
故郷の出奔を余儀なくされた真の理由
<映画のことば>
「3年かけて延滞税を払ったのに、お礼の言葉もなし。」
「当然だろ。相手は税務署だぞ。」
「歯をくいしばって払ったのに、完済の証文もなし。それで、手紙を書いたのよ。」
「何て書いた?」
「私の夫が、延滞税を完済したという証明書が欲しいと。ブラックリストに名前が載っていないか、確認してくれと。」
「余計なことを。」
「なぜ?」
「手紙を読んで役所は、俺の口座を遡って調べた。追徴税572ポンド。5年かけて、分割で支払えと。お前の手紙のおかげだ。」
宗教的な紛争もさることながら。
それにに加えて、過酷な政治(重い税負担)ー。
もちろん、それも重い財政負担(戦費の調達)からくるものなのでしょうけれども。
そのことも、故郷の出奔を余儀なくされた理由の一つ(…が、しかし、相当に大きな理由)として、見逃すことはできないと思いました。評論子は。
おそらくは、そのために親は経済的に困窮し、子供たちは(空腹と小遣いの不足から)食料品店で、万引きを働く始末。
それらの事情が、当時の北アイルランドのこの地に暮らす人々の上に、暗く重たい影を落としていたことは、疑いのないようで、問題の根本的な解決には、移民となることのほかに良策はなかったようです。
「苛政は虎よりも猛なり」(礼記)とは、よく言ったものだとも思います。
戦乱だけでなく、ベルファストにも「人食い虎」が潜んでいたからこそ、時代も地理も遥かに離れた場所のこの寓話と同じようなことが、監督の身の回りでも起こってしまったということになるのだと思います。評論子は。
本作は、評論子が参加している映画サークルが、2022年に札幌地区で公開された映画のベストテン映画(外国映画部門)として選定した作品の「見逃しの補遺」として鑑た作品でした。
その評に違(だが)わない、佳作であったと思います。評論子は。
<映画のことば>
「わざと数字を読みづらく書け。
先生が良き解釈をして、選択肢が増えれば勝率も上がる。」
「それって、ズルじゃないの?」
「スプレッド・ベッティングさ。」
「でも、正解はひとつでしょ。」
「答えがひとつだけなら、紛争など起きはせんよ。」