「「思い出はモノクローム」だが、カラーの場面がミソ」ベルファスト tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
「思い出はモノクローム」だが、カラーの場面がミソ
暴力に怯え、貧困に苦しむ家族の物語だが、少年の視点で描かれているため、政治や社会の問題点を指摘したり、それを糾弾するような内容にはなっていない。それどころか、両親も、祖父母も、みな良い人ばかりで、しかも、愛し合っているので、少年も、家族も、基本的には皆幸せである。それだけに、そんな幸せに満ちた故郷を離れざるを得なくなった時の哀惜の念が、胸に迫るのである。
何と言ってもモノクロの映像が美しいが、それ以上に、ところどころでカラーになる場面が効果を上げている。ブラナー少年が、映画や演劇の世界に夢心地になっていた状況が、感覚として理解できるのが楽しい。
その他にも、テレビで放映される映画やCMもうまく使われており、終盤の暴動の場面で展開される「洗剤」や「決闘」のエピソードは、拍手喝采ものである。
観終わった後には、祖父や父の教えが胸にしみる、郷愁の映画であった。
コメントする