「良いように解釈します」ベルファスト サプライズさんの映画レビュー(感想・評価)
良いように解釈します
パワー・オブ・ザ・ドッグに引き続き、アカデミー賞受賞作品。アカデミー賞が発表された翌日ということで、とても映画ファンとは思えないミーハーな1日ですけど、本作は監督・脚本・製作がケネス・ブラナーということで結構期待していた作品。決して、アカデミー賞に触発されて見た訳では無いから!笑 ポスターも予告もいいし…と思って見たが、もうとんでもなかった。外国映画で郡抜いて今年ナンバーワン。めちゃくちゃ良かった!!!
今年は愛おしくなる映画が多い。
邦画でいえば「ちょっと思い出しただけ」、洋画でいえば「フレンチ・ディスパッチ、ザ・リバティ カンザス・イヴニング・サン別冊」。それに次いで本作・ベルファスト。主人公・バディの好きな映画、音楽、クラスメイト、スポーツ、仲間、全てが愛おしい。映画.comの解説にも書いてあるように、力強いモノクロ映像に圧倒され作品に優しさと温かさをもたらしてくれている。すごいわ、、、これ。
そんなモノクロ映像。フレンチ・ディスパッチ...でも使われていて、最近の洋画のブームなのかなという気がした。本作でも上手く活用されていて、どれほどケネス・ブラナーが映画と舞台が好きだったのかが伝わる。白黒になる瞬間の美しさもたまらないし、終始白黒だからこそ感じさせられるものがある。色がないのに、そこには確かに華やかさがある。昔を振り返るからというのだけが映画をモノクロにした理由ではないんじゃないかなと、私は思った。
そして、なんと言ってもこの映画の見所はバディ。
悲惨な抗争や耐えない夫婦喧嘩の中でも、彼はちいさな幸せを見つけて人生を楽しんでいる。バディ目線で話が描かれているために少年心が擽られるし、暗い話なのに面白い。そっか、舞台は1960年か。懐かしのものがクリスマスの日にたんまりと。アガサ・クリスティには笑いました笑笑 幸せで心が満たされている時のバディが可愛いこと。
子どもにとっての恐怖、生きがい。カメラワークが最高に良くて、これまたフレンチ・ディスパッチっぽいんだけど、恐ろしいことが起こっているんだ、幸せなことが起こっているんだと言葉や動きではなく映像で見せてくれる。そして、大人には思いもつかないような発言や行動をする。そんな時、心の中でほほ笑みを浮かべながらもハッと考えさせられる。確かに、子どもってなんでそこ覚えているの?ってこと覚えているもんね。バディの心優しさと真っ直ぐさに心奪われ、揺さぶられました。
笑えるシーンが多くあり、エンターテインメント性も高い。抗争の中でも笑いはある。そんな作風は2年前に脚色賞を受賞した「ジョジョ・ラビット」を思い出させる。イギリス北アイルランド・ベルファストには多くの悲しみが訪れてしまったけど、それ以上に多くの喜びが日々起こる。バディと家族とのコミュニケーションにクスッと笑えて、心が温まる。ベルファストに行ったことないのに、まるで故郷のような気持ちに。何故だろう、スゴく懐かしい。
結末の描きはちょっと微妙だったけど、映像・役者・セリフ・描写・センス・脚本、何から何まで素晴らしい作品でした。ネタバレありでもっともっと語りたい。観客が私合わせて2人しか居なかったから、人気は相当無いのかな...。エンドロール中は心が幸せでいっぱいになり、何故だか涙が溢れだしてしまいました。そんな、素晴らしい作品ですので、是非とも多くの人に見ていただきたい。今の世の中に見るべきです。アカデミー賞脚本賞、おめでとうございます!!!
と、いうかビックリしたんですけど、映画始まる前にケロロ軍曹が流れるようになってるじゃないですか!ナイト・メア・アリーから流れてて驚き。違法であります!実はこれ、第2弾らしいですね。1弾いつ流れたのか...私がどれほど映画始まるギリギリに席に着いているかが分かります笑