劇場公開日 2022年3月25日

  • 予告編を見る

「現代版(1969年が舞台ですが)『我が谷は緑なりき』かな。少年(少女)の視点から見た映画に秀作が多いのは何故だろう。やっと今年観た中で(現時点)自己ベスト1に巡りあえて嬉しい。」ベルファスト もーさんさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0現代版(1969年が舞台ですが)『我が谷は緑なりき』かな。少年(少女)の視点から見た映画に秀作が多いのは何故だろう。やっと今年観た中で(現時点)自己ベスト1に巡りあえて嬉しい。

2022年3月27日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

①要所要所で流れるヴァン・モリソンの歌が良い。②お祖父ちゃんがいて、お祖母ちゃんがいて、お父さんがいて、お母さんがいて、兄弟がいて、隣近所のおじさん・おばさんがいて、遊び相手がいて、初恋の相手がいて…北アイルランド紛争が始まった年である1969年のベルファストという特殊な時代・場所を背景にはしているが、それを別にするとバディにとって当たり前の世界を描きながら、それが万国のどの少年にとっても当たり前のささやかだけれども愛しい日々への郷愁という普遍的なテーマに昇華させているのが素晴らしい。③1969年と言えば私は8歳だったのでバディとほぼ同世代といえる。スタートレックを観ていて、サンダーバードに夢中で、映画『チキチキバンバン』『紀元前100万年』を楽しんで…と他人事のように思えないところにより共感度が増す。④上のTVシリーズや映画はもとより、映画のあちこちに1969年の時代相を示す小道具が散りばめられているが、お父さんのロンドン土産の中にあったアガサ・クリスティの「ハロウィーン・パーティー」(1969年出版)…ケネス・ブラナーはやっぱりアガサが好きなのかな…監督・主演したアガサ映画は評価出来ないけど(また言ってる)。⑤お祖父ちゃん、お祖母ちゃんが長い人生の中で積み重ねた経験や知識から得た人生を過ごして行く上での知恵やこつを孫に話して上げるのはいつの時代でも同じ(日本の都会ではだんだん少なくなっているようだが)。孫も父さんや母さんの言うことには反発することはあっても、お祖父ちゃんやお祖母ちゃんの言うことは素直に耳を傾ける。その時は理解出来ていなくても。その辺りもお祖父ちゃん・お祖母ちゃんを演じる両イギリスの名優によって慈愛溢れるシーンとなっている。⑤美しくてしっかりもので、優しいけれど怒ると恐いお母さんを演じるカトリーヌ・バルフも好演。これまでに観た映画(『スーパー8』とか)にも出演していたらしいが全く記憶になし。でも今回でバッチリ。スタイルが良くて脚が長いなぁ、と思っていたら元モデルさんだったんですね。⑥競馬好きで(悪いことではないけれど)少しお金にルーズで(らしい)、腕の良い大工ながら地元に職が無くてロンドンに出稼ぎに行っているけれども家に帰るとやっぱり頼もしいなかなかカッコいいお父さん。無骨そうなのに歌も躍りも上手くてバディが憧れの目で見つめ、出稼ぎに行くときはいつまでも手をふって見送る大好きなお父さん。この年頃の男の子にとってお父さんはやはりヒーローだもんね(あと数年したら反抗期に入るにしても)。しかし、このベルファストの労働者階級の一家族のお父さん役を淡々と演じた俳優さんが(◯ッ◯◯シーンにブラックホール出現の)『フィフティ・シェイド・オブ・グレイ』の主演男優だったとは驚き。カッコいいのもこちらも元モデルだからか。⑦派手な夫婦喧嘩もするけれど、旦那が子育てについてキチンと奥さんに感謝の思いを告げ、二人の時は恋人時代に戻ったように振る舞う(お祖父ちゃん・お祖母ちゃん夫婦も同じく)夫婦像は、なかなか日本映画では見れなくて羨ましい。⑧バディが、ケネス・ブラナーが監督したことのある『マイティ・ソー』のコミックを読むシーン(自虐ネタか?)とか、決して裕福な家庭ではないし、環境も不穏な中ながらそこここにユーモアが散りばめられているが演出が良い。バディが悪友の女の子に誘われてスーパーの強奪に巻き込まれた時に盗んだのが洗剤。「何で洗剤なんか取ったの?」と詰問された答えが「環境に優しいから」(だいぶん前のシーンの伏線回収)。強奪シーンの凄まじさを忘れさせるくらい笑わせてくれました。⑨そして、ラストシーン、名女優ジュディ・デンチ演じる、連れ合いを亡くし、新天地へと旅立って行く息子一家を見送るお祖母ちゃんの、愛情・哀惜・覚悟・孤独がない交ぜになった表情で幕を降ろす演出が宜しい。⑩そのあと、「残った人達の為に、去った人達の為に、亡くなった人達の為に」という文章が画面に映し出されるが、図らずも現在起こっているウクライナ情勢とシンクロナイズしているよう。バディの算数の宿題の手伝いをしているときにお祖父ちゃんが言った「答えが一つなら紛争なんぞも起こらないのだがな」という台詞が深く重い。⑪ケネス・ブラナーは、“ローレンス・オリヴィエの再来”と言われていた頃の監督作品群は観ていないので何とも言えないが、最近の作品はその名声からすればガックリ来るような作品ばかり《『マイティ・ソー』(まあ、そこそこ)『シンデレラ』(酷い)『オリエント急行殺人事件』(噴飯もの)『ナイル殺人事件』(『オ急』のリベンジ成らず)》だったが、本作は感心した。

もーさん
Mさんのコメント
2023年1月29日

サンダーバードですか。サンダーバード2号でしたっけ。深緑色の乗り物。
アゴが動いてしゃべっている姿を覚えています。

M