「暴動。家族。故郷。じいちゃんとばあちゃん。小さな恋のメロディ。従妹は厨二病。海峡を渡ればイングランド。」ベルファスト bloodtrailさんの映画レビュー(感想・評価)
暴動。家族。故郷。じいちゃんとばあちゃん。小さな恋のメロディ。従妹は厨二病。海峡を渡ればイングランド。
映画冒頭の暴動はボグサイド地区へのアルスター派ロイヤリストの侵攻を描写していると思われ。これ以降、民衆はバリケードを建てて自衛を始めます。時代的には、暴動による死者が発生するに至り、軍が介入を始めると言う、「暴力的に荒れ始めた」頃。現実に比しては、ソフトな描写。あくまでも北アイルランド問題は背景でありテーマでは無く。その時代に生きた人々と家族が主題。
でですよ。
モノクロの画は、美しさが無ければ意味が無いと思うんですよね。これは良かったです。モノクロで撮ると、やたら「陰影・光と影のコントラスト」の一本勝負的描写が延々と続くとか言う印象があります。ベルファストは、そこに行かないんです。構図勝負。と、造りこみ勝負。
親子が中庭で話し込む場面。画面の中央奥には表通を覗くゲートがあります。そこを通り過ぎるエキストラ。画面がドンよりと停滞してしまう事を、このゲートから見える人の動きで回避すると同時に、「街の生活感」が匂って来ます。
そもそも開始直後の、まるでミュージカルでも見ている様な人々の動き・躍動感の表現。からのロイヤリスト暴徒侵攻。この緻密さ、ディズニー作品よりも好き。
と。なんと言っても。
ジュディ・デンチ様にございます。ヤバい。これはヤバい。樹木希林さんって、画面に現れるだけで物語を自分のものにしてしまうくらいの存在感があったと思うんです。ジュディ・デンチも同じですよね。夫婦の全ての場面、彼女の登場するすべての場面に漂う、独特の郷愁感。そうなんですよ。何か、この映画のノスタルジーのほぼ全てを、彼女が一人で作り出してる気がして。あざとさが無いんですよね、全く。ものすごく自然で。
ベルファストの残る祖母がバディ一家に囁くんです。
Go ahead...
Don't Look Back...
劇中、カトリックの彼女と結婚できる?と尋ねるバディへの父の回答のココロは「フェアな人々への偏見を捨てろ」
なんか、ダンスシーンは要るんかい?なんてところはあったけど、この時代設定で政治色を脱色し、メッセージに普遍性を持たせる構成って、最近じゃ珍しいと思ったりする訳で。
良かった。とっても。
オスカーは、個人的には、これがイチ推しです。