「悲惨すぎる負のサイクルはどうしたら終わるのだろうか……」ムクウェゲ 「女性にとって世界最悪の場所」で闘う医師 バフィーさんの映画レビュー(感想・評価)
悲惨すぎる負のサイクルはどうしたら終わるのだろうか……
『三島由紀夫VS東大全共闘 〜50年目の真実〜』『米軍アメリカが最も恐れた男 カメジロー不屈の生涯』などと同じく、TBS制作のドキュメンタリー映画。東海テレビ制作のドキュメンタリーと並んで社会派な作品も多い一方、アーティストのバックステージものなどかなりバラエテイにとんでいて、楽しみな日本のドキュメンタリー・ブランドのひとつだ。
2021年のTBSドキュメンタリー映画祭にて上映された『ムクウェゲ 「女性にとって世界最悪の場所」で闘う医師』が、ついに一般劇場でも公開されることになった。
2018年にノーベル賞平和賞を受賞した、デニ・ムクウェゲが、コンゴ民主共和国にとって、いかに必要な医師であるか……という話から、コンゴという国が抱えている大きな闇、そしてそれは日本も少なからず関係してするという事実にも迫っていく。
ムクウェゲ医師の病院には、年間で2500~3000人の女性が運びこまれる。命が助かる者もいれば、手の施しようのないほど損傷が激しく、そのまま亡くなる者も多い。
何故、こんな状況になってしまったのだというか……
コンゴという国は、40万人もの武装勢力があふれかえっている。これは『ホテル・ルワンダ』などの映画やドラマでも題材にされてきた、ルワンダの大虐殺によって、難民がコンゴに流れこんだことで、治安が極端に悪くなってしまったことが原因ともされている。
武装勢力は、コンゴに住む女性たちをレイプしては虐待、酷い場合は殺害もしてしまう。その手は、幼い8歳の少女にも及ぶという異常な治安の悪さだ。
武装勢力にとって、女性をレイプすることは、性のはけ口というわけではなく、それによってトラウマや恐怖を植え付け、精神的に支配することが目的である。それを行っている男性も、逆らえば上官に虐待や処刑されることもあって、嫌々でもしなければならないという。
隙を見て逃げ出した兵士のインタビューから感じたのは、誰もが恐怖によって支配されている現状だ。その虐待をする上官も、もともとは、そうやって叩き込まれてきたのだ。ミルグラム効果による、悲惨すぎる負のサイクルは、どうしたら止まるのだろうか……
国の政権自体もほとんど機能していない、無法地帯。
日本が無関係だと言えない理由は、パソコンやスマートフォンに使われるパーツの原料がコンゴでとれることで、そこに集まってくるから治安悪化が進んでいるからだという。これに関しては、ミネラルウォーターやダイヤモンド、動物毛・革製品など、様々なものに言えてしまうことでもあるため、極論すぎるようにも感じられるが、他人事ではないという意識は誰もが持つべきものだと痛感させられる。