スワン・ソングのレビュー・感想・評価
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さりげなさが良かったです。
近未来感や、デバイスの使い方、チョコレートのくだりなど、全てにおいてさりげなさが凄く良かったです。
チョコレートのシーンは監督や脚本家などが実際に体験したかのような、実にありそうなシーンも良かった。
映画を観終わった後も、じんわりと感動が、、、。
素敵な映画です。
【エンパシー/人の苦悩や痛みを知る】
※ AppleTVオリジナル作品。
クオリティの高い示唆的なSF作品だと思う。
人を人たらしめているものとは、一体何なのか。
“スワン・ソング”とは、人が亡くなる直前に人生で最高の作品を残すこと、また、そうした作品を指し示す言葉だ。
(以下ネタバレ)
双子の兄弟を事故で亡くし、自分を責め、心を閉ざしたことがあるポピー。
死に直面し、これから苦悩するであろうポピーに想いを馳せるキャメロン。
自分の記憶を移植したクローンを残し、ポピーが苦悩せずにこれからも幸せに過ごせるようにと願う心は果たして間違っているのか。自分のエゴなのか。
葛藤し、ケイトとの交流を通して、決意を固めていくキャメロン。
キャメロンの苦悩と向き合う”もう一人のキャメロン”。
キャメロンの苦悩を理解し、更に、キャメロンの苦悩と向き合おうとするもう一人のキャメロン。
コンタクト・レンズを通して、もう一人のキャメロンが、キャメロンに残した映像は、人の苦悩や痛みを知ったから、そこにエンパシーを感じだからこそなのではないのか。
仮に、もう一人のキャメロンの、キャメロンと過ごした期間の記憶が消えてなくなったとしても、そうしたエンパシーを得る力は、きっと、記憶とは異なる、もう一人のキャメロンのもっと心の奥深いところに残るのではないのか。
そして、これは、人間がもともと備えている、人を人たらしめている最も大切な能力ではないのか。
もしかしたら、これこそが人類のスワン・ソングなのではないのか。
今、僕たちが忘れかけているかもしれないもの。
この作品では、もう一人のキャメロン自体をスワン・ソングと考えがちだと思うし、クローンと記憶の移植という、一義的にはモラリティを考えさせられる部分はあるものの、実は、人を人たらしめているものは一体何なのか、そこにたどり着けたことこそスワン・ソングなのではないのかというテーマに踏み込んだ秀作だと思う。
観る側のリテラシーが試されるとても示唆に富んだ作品だ。
胸を締め付けられる葛藤
近未来。不治の病となった男。残される家族の為に実験に申し込む。自分が同じ境遇にあり、こんな選択肢があれば実行するだろうかと誰もが考える。
この実験技術や社会背景を説明するSF要素は皆無で、男の葛藤と喪失を搾り出してシンプルに観せている。未来都市やテクノロジーをこれ見よがしに描くような野暮を潔く避けているのが良い。そういうものを撮りたい映画ではないのである。
静かな湖と森の映像が美しく、死を覚悟した人と、そこに感情移入した観客の行き着く心の境地を象徴しているかのよう。最後にこんな森で密かに余生を送るのは悪くないかもしれない。
余計なディテールをぎりぎりまで削ぎ落とした脚本。人生の儚さと、いつかは来る、かけがえの無いものを失う日のことを考えさせる。
じぶんがつくれる未来
未来の設定なら未来感をださなきゃいけない。
よく見るのが虚空にあらわれるGUIでそれを手指で操作する表現。
ようするにスマホ画面が任意のばしょに出現しそこからto doするわけだが、それをもって未来ですからね──と言っている映画はとても多いので、わたしとしてはこのGUI(グラフィカルユーザーズインターフェース)の表現が出てくると、わりと白ける。
おそらくホントの未来にはもっと現実的なインターフェースが使われているのではなかろうか。
どこかをタップやスワイプやフリックしているのは映画の中だけの挙動であって、ましてや日本なんてこれから(ますます)老人の国になるわけだから、ピンチアウトする前に老眼鏡かけなさい──という話である。
ちょっと未来──という設定の本作では、ほかにも未来表現がでてくる。列車内販売がボットになっている。echo barという、いかにもありそな栄養補助チョコバーがでてくる。ちなみにキャメロンとポピーの縁はecho barがとりもつことになる。
四輪車は自動運転でいかにも未来的デザインをしている。カメラ機能を備えたコンタクトレンズ。情報とレジャーを提供するイヤホン。フィギュアの対戦ができるゲームコントローラー。こめかみに貼るだけの同期装置。
──そして病気(など)で短命に人生が終わることになった人に替わって、つづきの人生をやってくれるクローンにんげん。
SwanSongは、じぶんの死期をさとり、そのサービス(家族を悲しませることなく、あとはクローンが生きてくれる)を申し込んだ男(マハーシャラアリ)の話。by Apple Original Films。
コンテンツにソフィアコッポラのOn the Rocks(2020)を見つけたときからAppleTV加入しようかな──と思案していた。
で、7日間無料だから、見たいコンテンツが貯まってきたところで入り、7日間以内に解約する見逃げをしよう──と考えていた。
ソフィアコッポラ監督が玉石なのは知っているので、それほどOn the Rocksが見たいわけじゃなかった。でもさいきん年(2021)末ということもあって、そそるタイトルが集まってきた。
NetFlix、Disney+、Amazon prime、HBO MAX・・・VOD群雄割拠の時代なので、AppleTVもフィンチ/パーマー/インベージョン/Dr.ブレイン等等、よさげなタイトルを繰り出していた。が、さほど気持ちは揺れなかった。
揺らしたのはこの映画SwanSong。
監督は本作が長編デビューの人らしいが、惹かれたのは配役。わたしはどうしてもマハーシャラアリとオークワフィナが並んでいたり話していたりする様子を想像できなかった。その呉越同舟見たさにAppleTVに入った。
じぶんとまったくおなじ(クローンにんげん)とはいえ(家族をあざむいて)身代わりに過ごさせる──という道徳的ジレンマと葛藤、および別れの悲しさに主題が置かれた、いい作品だった。
主題に見合った落ち着いたカメラワークで監督より高柳正信の功績が大きかったと思う。
個人的にはもっとアリとオークワフィナのやりとりが見たかった。呉越を予測したとおり、ふたりが絡んでいると、妙でいいかんじだった。からだ。
また、いつもの元気なオークワフィナとちがう寂しげなオークワフィナが(すごく)よかった。
見逃げしようと思っていたがプログラムをながめていたら無理だとわかった。いまどき仮加入者を逃すようだったらトライアルなんてしないよな。まあ月600円だし。
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