「Music sings Music」ライフ・ウィズ・ミュージック bloodtrailさんの映画レビュー(感想・評価)
Music sings Music
「瑞々しい感性」なる慣用化した表現が、これほどに当てはまる映画も珍しいよ。最近は、あまり耳にしなくなりましたが。「瑞々しい感性」とかいう、言い古された表現。映画や小説などの宣伝文句に、よく使われたりしてたんです。でですよ。作品そのものを見てみると、読んでみると、「どこが瑞々しいねん?」ってしか思えなくって、おおむね。
でも、これは好きやわぁ。
結婚披露宴のステージで。Musicを唄いだしたのがMusicだと言う、反則級のクライマックスの、恐ろしく控えめな演出が、大大大大大大好きです。と言うか、ボロリーーンと来た。ポロ、っじゃなくて、ボロリです。いきなりだったんで、あまりにもw
人は生き方を変えられる、系の小さな小さな物語の登場人物は、脳性麻痺を抱えた女の子と、ドラッグの売人で糊口をしのぐジャンキーな姉上と、HIVに冒されているアフリカ移民の元ボクサー。底辺で生きる人たちの、哀しくて、寂しくて、暖かい毎日は、ルーチンを壊されればパニックを起こしてしまうMusicを軸にして、くっきりとした時刻歴の上で展開して行きます。
「弱さ」は人それぞれ。「弱さ」への対処の仕方も人それぞれ。
同じ様に。
「強さ」も人それぞれで、「強さ」の使い方もまた、人それぞれ。
過去や現実から逃れようとする弱さ。
養父の暴力への恐怖。
対人交渉の図太さや、他者へ見せる優しさ。
優しい養母を守ろうとする勇気。
自分の世界に没頭するMusicは、機械によって感情表現する事を覚えますが、自ら言葉を発することは出来ず。他者を責めたり貶める事を知りません。他者に頼ることでしか生きられないけれど、それが当たり前の事だと思っています。純粋に、無垢に、他者を信じているだけなのに、それが人の心を掴むと言う。
Musicの脳内を再現したプチミュージカルの原色バリバリ演出が、結構好き。シンプルなMusicにピッタンコで。
Siaの初監督作品と言う事ですが、Musical部分以外の映画部分の出来が、壮絶に良すぎて驚愕ですw
と言うか、お願いしたいのは、「もっと撮って!」
良かった。結構。