「ピクサー作品という期待値を上回る疾走感が特徴の一作」私ときどきレッサーパンダ yuiさんの映画レビュー(感想・評価)
ピクサー作品という期待値を上回る疾走感が特徴の一作
コロナ禍などの様々な事情により配信が先行していた本作、劇場公開を待ち望んでいた人にとっては今回待望の劇場公開となりました。
ドミー・シー監督の思い出や体験をふんだんに盛り込んでいるため、舞台は2000年代初頭のカナダ、トロント。作り手の記憶を作品に昇華させる手腕に長けたピクサーだからこそ、今回も自伝的な要素とレッサーパンダに変身する女の子、という奇想天外な設定をどう取り混ぜて一つの物語に練り上げているのか、否が応でも期待値が高まりました。
実際の内容としては、その期待値に十分こたえてくれる物語であることに加えて、音楽やアイドルなど、当時の様々なポップカルチャーの要素を取り入れて、予想を超えるほどの疾走感を伴っていることが、本作の大きな特徴となっていました。
赤いレッサーパンダが一体何を意味しているのか、この点だけはピクサー作品としては珍しく、くどいほどの説明を加えているんだけど、思春期を迎えた主人公・メイと、彼女の成長に戸惑う母親の関係に描写を収斂させていくのでなく、さらに一族の因習へと物語の枠を押し広げていきます。
レッサーパンダに変身してしまう自分自身を自覚したメイに対して、母親と親族が提示した対処方法、そしてそれに対してメイの下した結論は、「いい意味で報いのあるヘレディタリー」とでも呼びたくなるものでした!
作中に登場するボーイズ・グループ「4★TOWN」は、フィニアスとビリー・アイリッシュが手掛けた楽曲といい、確かに2000年当時の雰囲気をよく伝えているんだけど、見方によってはKPOPのグループであるようにも思えてくる、という現代とのさじ加減が絶妙。
コメントする